『生きのびるための事務』(坂口恭平 原作/道草晴子 漫画)マガジンハウス

 作家、画家、建築家、音楽家であり、番号を公開した携帯電話で死にたい人の声を受け止める「いのっちの電話」を長年続けるなど多彩な活動を行う坂口恭平さん。それを支えるのが20年前に気付いた「事務」の大切さ。目標を立て、スケジュールを作り、やるべきことをやる。本書は自らの経験を記したテキストを原作とするコミカライズ。若き日の坂口さんと奇妙な相棒・ジムとの対話を軸に「事務」の心構えを説く。

「事務作業って、世の中の多くの人はあまり着目しないですよね。特にクリエイティブ系の人はそう。坂口さんもまさにそのタイプですが、そんな人が事務の大切さに着目するところが原作の面白さでした」(担当編集者の関谷武裕さん)

 読者は夢を追う若者が多いのかと思いきや、中高年に響いているという。

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「実は自分も、事務を顧みないことで30代の頃に仕事で壁にぶつかったんです。そんなときに原作から刺激を受けた。似たような『中年の危機』を感じている人は多く、そこに響いたのかもしれません」(関谷さん)

 ちなみに関谷さんは坂口さんと長い付き合いで15年前の彼の姿を知っている。

「まさに本書に描かれたとおりの人でしたよ(笑)。だから読んだ後に、実際に『事務』を続けた人がその後どうなったか、答え合わせをするような面白さもあるんです」(関谷さん)

2024年5月発売。初版7000部。現在5刷5万部(電子含む)