「盗撮という事件の性質上、ヘタに動いて写真を消されたら困りますし、学校側の出方をまず見ましょう。この手の事件は、部員たちが結託して事前に口裏を合わせてしまう恐れもあります。なんらかの形で盗撮画像などの証拠が出てきて、その画像がはっきり誰であるか判明できる程度に写っているものであれば、逮捕も可能になってくる」

 その後も、事件が行われた入浴時間などの把握に重要と言われ、私たち親子は当時の合宿の参加者名簿やスケジュールを集めて警察にFAXで送った。

写真はイメージです ©AFLO

「盗撮が実際にあったという事実確認がとれました」

 高校から連絡が入ったのは、盗撮被害の相談をした1週間後のことだった。

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「一応、本人から話を聞きまして。盗撮が実際にあったという事実確認がとれました。画像はアップも転送もしていないそうですし、盗撮した本人はその画像を既に消していて所持していないということです」

 謝罪もなくそれだけを告げ、こちらの反応を窺う様子だった。実際に盗撮をしたA男は高校3年生で、間もなく卒業となる。その高校は偏差値が70を超える首都圏の公立進学校なので、まさに大学受験の時期だった。

 私の念頭には、同じく2017年に同じ県内で校内での盗撮が発覚し、加害生徒が退学処分になっていることがあった。そうした事情も踏まえて、理沙も加害生徒を退学にさせたいと言っていたが、その求めに対して副校長はこう答えた。

「単位認定が既に降りてしまっているので、学校ができるのは盗撮した加害者1人に対する無期限謹慎処分が限界です」

「無期限謹慎処分」とは言っても、卒業式まで2週間しかなく、3年生の登校日は卒業式の予行演習と卒業式当日の実質2日間しかない。また、実際に盗撮をしたA男以外の部員たちについてはお咎めナシだと言う。

 納得できず教育委員会に問い合わせたが、やはり卒業認定の取り消しは不可能というのみだった。

 A男たちの卒業式が迫ってくるが、理沙も他の被害者も謝罪は一切されていない。しかも、A男たちが卒業した後はコンタクトを取ることがさらに難しくなるため、高校の副校長にA男の親への連絡を依頼した。

 するとその夜、A男の母親から電話があり、驚くべきことを伝えられたのだ。