そう伝えられ、理沙も親の自分も混乱してしまった。盗撮した男子部員はもちろん、知っていたのに黙っていた他の部員にも怒りが沸いた。2年半も黙っていたB子にさえ腹が立ったのが正直な感覚だった。理沙は一緒に盗撮被害にあった3人のマネージャーと話し、「犯人に謝罪させたい、何なら訴えてやりたい」と言った。

 とはいえ、事件からは2年半という時間が経っている。

 理沙の話を聞きながら事実関係をメモし、まずはネットで「盗撮 被害」と検索してみると、出てくる記事は「盗撮を第三者に気づかれた」「盗撮で被害届を出された場合に取り下げてもらうには?」など、加害者目線の法律相談ばかり。

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写真はイメージです ©AFLO

 それでも被害者が最初にすることは「被害届」の提出だと思い、まずは被害当時に理沙が所属していた高校に電話すると、副校長が電話口に出た。

 副校長は理沙が卒業後に赴任したため、娘の存在は知らない。くわえてまだ在籍している後輩A男の名前も把握しておらず、「そういった生徒はいないようですが?」と言う。埒が明かないため警察に相談する意思を伝えると、副校長は「それを止める権利はこちらにはありませんので」と淡々とした対応だった。

「盗撮された画像が欲しいですね。私がじゃないですよ?(笑)」

 そこで理沙と一緒に近くの警察署を訪ね、盗撮被害の相談だと伝えると生活安全課少年係に案内された。立ち会ったのは係長を含めた4名の警察官。理沙と私はそれぞれスマホを提出し、承諾書類にサインと拇印を押し、全身と正面・横の顔写真も撮影された。そこから一通り事件について話をしたが、「被害届は出せない」と言われてしまったのだ。

 理由としては、盗撮画像が入手できていないことと、事件から2年半が経過していることなどを指摘された。盗撮について知らせてくれた後輩マネージャーとのLINEのやりとりのスクリーンショットを提出し、合宿時の集合画像なども提示したが、警察が動く材料にはならないという。

「とにかく実際に盗撮された画像が欲しいですね。欲しいって言っても、私がじゃないですよ?(笑)」と警察官らしからぬ全く笑えない冗談をはさんで、こう告げた。