「町のほうでも認識してるところもありますんで、できることからというんですかね。その辺は考えていければなというところはあります。はい」

 地域を深く愛してきたというこの男性。これまで、町名の「えさし(枝幸)」にちなみ、全国の「さちえさん」や「ゆきえさん」を集めるイベントを開催し、町おこしに貢献してきたことが自らの功績だという。

「やっぱり町民の意向をまず聞いて、行政との橋渡しを自分はしている。自分で考えて質問するのもいいが、ただ議会で質問すればいいという問題ではない」

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 男性は、そう持論を展開した。

 

 自信に満ちた彼の主張にはそれなりの説得力が感じられる。小さなコミュニティの中での意見の調整としてはこうした方法もやむを得ないような気もしてくる。しかし、問題点はないのだろうか。

「口利き」が議員の仕事だった時代もあったが…

 男性議員が、議会を活動の場としない背景には、討論の場となるべき議会が機能していない現状があるのだろう。前出の山梨学院大学の江藤教授は、次のように指摘する。

「右肩上がりの経済成長の時代は、議員の仕事は口利きのようなところがありました。ただし、地方分権が進み、時代が変わって議会に求められる役割は、大きく変わりましたが、肝心の議員には、まだ旧来の意識のままの人が多いのです。かつては公的施設などを作るにしても、『あれも、これも』の時代でしたが、これからは縮小の時代。予算なども限られている中で、公的施設の整備や統廃合、福祉サービスの水準ひとつとっても、『あれか、これか』を絞り込まなければいけなくなります。そうなると、どういう街作りを目指したいか、何に絞り込むかといったことを価値観や意見をぶつけ合いながら決めなければならなくなるので、議会が話し合って決めるという本来の役割の重要性が再認識されるようになるはずです」