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カンヌ映画祭パルムドールの『ザ・スクエア 思いやりの聖域』が上陸

リューベン・オストルンド監督が語るアートの世界

2018/05/05

そもそも世の中は、いい・悪いの二択じゃない

 監督は、観客の想像力を信じ切っているということ?

「そう、観客のことは信じていますよ。彼らの想像力が途切れることは決してないでしょうし、映画から受け取った問いは考え続けてくれるものだと思っています。

リューベン・オストルンド監督

 この作品が提起する問いは、広範で大きなものです。僕らの社会がどんなものであるといいんだろう、人間として他者とどう接していくのがいいのか、などなど。だから、そんな簡単にわかりやすい結論が出ないのは当然といえば当然ですね。そもそも世の中は、いい・悪いの二択じゃないのだし。

 社会学の研究では、あえて人工的にトラップを仕掛けて問題にぶつかった人物がどんな行動をするのかを観察する実験手法があります。そうした社会学的な側面が、この作品にもある気がします。主人公クリスティアンがどうふるまい、何を考えるか。僕ら一人ひとりが観察・考察しているんですよね」

 

アート界は理屈ばかりが膨らんで、行き詰まっている

「考えさせる」映画をつくるうえで、アートをモチーフにしたのはひじょうに効果的だったのでは? 矛盾や迷いを抱え込みながら、美という理想を追い求めるのがアートだとも思うのですが。

「アート、特に現代アートは理屈で人を煙に巻くようなところがありますよね。その論理を取り除いてしまうと、じつはあまり内容がなかったりということも。

 

 現代アートの創始者と目されるマルセル・デュシャンは20世紀の初頭に、展示空間に作品を置くとはどういうことかといった『原点』を見つめ直し、挑発的な作品や行動を世に問いました。

 それから100年ほど経つのに、アート界は今も同じことを繰り返してしまい、理屈ばかりが膨らんで、行き詰まっているところがあるんじゃないでしょうか。

 

 それに、前に大きなアートフェアに足を運んだら、作品がどれも富裕層の部屋にいかにもぴったりなインテリアに見えてしまった。それじゃあまり興味をそそられません。アートにはいつだって権威や理屈やお金のことがまとわりついてきて、矛盾や迷いを生じさせがちです。

 アート作品やアートシーンは何のためにあるのか。そこをもっと考えていくべきですね。本来ならアートは、僕らがどう生きるといいのか、社会はどうあるべきかといったことを掘り下げるきっかけに、ちゃんとなり得るものなのですから」

INFORMATION

『ザ・スクエア 思いやりの聖域』
4月28日(土)全国ロードショー
http://www.transformer.co.jp/m/thesquare/

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