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マラソンは芸術だ…箱根駅伝に挑み続ける早稲田大学競走部に継承される教え

マラソンは芸術だ…箱根駅伝に挑み続ける早稲田大学競走部に継承される教え

『俺たちの箱根駅伝』(池井戸潤)を読む #1

6時間前

source : 文藝出版局

genre : エンタメ, 読書, 社会, 企業

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上武大学で初めて箱根を走った選手は

――そもそも箱根駅伝に出場経験のなかった上武大学で、予選を突破して本選へ出場されるまでも大変だったと思います。

花田 なかなか難しかったですよね。櫛部(静二)くんや平塚(潤)さんが、城西大学3年目で箱根駅伝本選出場を果たしていたので、3年くらいでできるんじゃないかと思ったら、瀬古さんからは「上武大学は都心と比べて不利な面もあるし、選手集めも知名度が上がるまでは大変だ。5年から10年という長いスパンで考えろ」と言われました。

 就任4年目の時に、上武大学では初めて福山(真魚)が学連選抜に選ばれて、5区を走って3位、総合成績でも4位という好成績を収めました。みんなで応援に行った夜、ホテルに集まったとき、彼が「これまで辛い思いをして練習をやってきたけれど、あの舞台にはそれだけの価値があった。その景色をみんなにも見せたい。だから来年も頑張ろう」って言ってくれて……。あのときチームが盛り上がったのをひしひしと感じました。そしてそれから1年後、自分が勧誘して上武大学に入ってきた選手が4年生になったとき、本当に箱根駅伝に出られたんです。

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 学連選抜はいまは順位がつかない「オープン参加」になり、モチベーションを高める難しさもある。駅伝競走は本来大学ごとのチーム単位で出るべきなのではないかという意見もふくめ、すごく難しいんですが、あの経験を思うとやはり学連選抜には意義があると思っています。私も関東学連の理事として、これからも真摯に考えていくつもりです。

後編に続く

 

花田勝彦(はなだ・かつひこ)
1971年京都市生まれ。滋賀県立彦根東高校を経て早稲田大学人間科学部へ。3年時には箱根駅伝に総合優勝、4区区間賞(区間新)を獲得。94年ヱスビー食品陸上部へ進み、96年アトランタ五輪で10000m、97年アテネ世界陸上でマラソン、2000年シドニー五輪で5000m・10000m日本代表。2004年に引退後は上武大学准教授・上武大学駅伝部監督に就任、同大学を08年箱根駅伝初出場に導き、以来8年連続で本選出場。16年GMOインターネットグループ陸上部監督に就任。22年6月より早稲田大学競走部駅伝監督に就任。

俺たちの箱根駅伝 上

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池井戸 潤

文藝春秋

2024年4月24日 発売

俺たちの箱根駅伝 下

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