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「箱根駅伝優勝」と「早稲田から世界へ」。復活を期す名門大学競走部が目指すもの

「箱根駅伝優勝」と「早稲田から世界へ」。復活を期す名門大学競走部が目指すもの

『俺たちの箱根駅伝』(池井戸潤)を読む #2

4時間前

source : 文藝出版局

genre : エンタメ, 読書, 社会, 企業

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 早稲田大学時代は3年時に箱根駅伝で区間賞(区間新)&総合優勝を果たし、実業団では世界選手権や2度のオリンピックに出場した花田勝彦さん。引退後は指導者として上武大学を箱根駅伝初出場に導き、連続出場を果たした。

 現在は母校の競走部駅伝監督に就任し、さらなる高みを目指す花田さんは、池井戸潤さんの『俺たちの箱根駅伝』をどう読んだのか――。

 ロングインタビュー後編です。

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◆◆◆

早稲田から世界へ、オリンピックへ

――上武大学で12年間、実業団のGMOインターネットグループ(以下、GMO)で6年間指導者を務められた後、2022年6月に母校・早稲田大学競走部の駅伝監督に就任されました。

花田 早稲田では「箱根駅伝優勝」という目標はもちろんありますが、もうひとつ「早稲田から世界へ」というテーマがあります。推薦枠こそ少ないですが、幸い全国優勝した強い選手も入ってくれてきて、そういういい選手をスカウトした立場として、かつての自分がそうだったように、きめ細かくその選手をしっかり育てるのが大事だと思っています。

 やはり箱根駅伝はとても大きなコンテンツで、学生にとっては最大の目標です。これを走り切ってさらに世界、オリンピックを目指すには、もっとハードなことに挑まなければいけないんですが、ハードなことをやっていくと失敗体験も増えていく。

 うまくいかないことを乗り越えなければいけないんだけど、箱根駅伝という成功体験があるので、卒業後の練習環境に疑問を持ち、ハードワークすぎるんじゃないかとか、大学時代に立ち戻ってしまったりする。それでうまくいくこともありますが、上を目指すのであれば新しいチャレンジをしなければならない。その難しさをGMO時代には痛感してきました。

 上武大学、GMOでの経験を経て、東京オリンピックが終わった頃、指導者としてうまくいかないことも多く、休みたいと思ったこともありました。そんなときに瀬古さんに相談に行ったら、「休んでる場合じゃない、早稲田が大変だからちょっと一緒にやろう」と言われ、早稲田大学で指導することを決めました。

 約30年ぶりに母校に帰ってきて、これまで選手たちに言い続けてきた「世界を目指しなさい」ということが、早稲田ではすっと入る子が多いことに驚きました。自分自身も瀬古さんから、「はじめから将来はオリンピックを目指して、オリンピアードで人生を設計しなさい」とずっと言われてきたんですが、大迫(傑)君や現役の選手たちにも、そういう教えが受け継がれているんだな、と。

東京五輪に続きパリ五輪にもマラソン日本代表として出場する大迫傑選手