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「箱根駅伝優勝」と「早稲田から世界へ」。復活を期す名門大学競走部が目指すもの

「箱根駅伝優勝」と「早稲田から世界へ」。復活を期す名門大学競走部が目指すもの

『俺たちの箱根駅伝』(池井戸潤)を読む #2

6時間前

source : 文藝出版局

genre : エンタメ, 読書, 社会, 企業

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今年はチームとして結果が求められている

――瀬古さんと花田さんの選手時代と、今の箱根駅伝は変わってきていますか?

花田 昔のように根性論的な方法で勝てる駅伝ではなくなってきていますね。青山学院大学の強さをみても、原監督のマネジメント力はもちろんありつつ、選手の体作りをするフィジカルトレーナーのグループがいたり、栄養管理専門のグループがあったりとか、様々な専門に特化したサポート体制が必要になってきています。私も練習メニュー作りだったり、選手の現場の指導は専門家として見ていますが、管理栄養士やメンタルトレーナーにスペシャルな部分はお任せしています。

 さらにはシューズなどのギアの影響力も大きいです。『俺たちの箱根駅伝』でも、アトランティスというシューズメーカーが出てきて、池井戸さんの『陸王』と関連に思わずニヤリとしましたが、実際にシューズはひとつの武器というか、それでレースが大きく変わるところがあります。今後はウェアもひょっとしたら新しいものが出てくるかもしれないし、いかに最新のテクノロジーにアンテナを立てて入手するか、も大事ですね。さらにそれを使いこなせる体作りをしなくてはならないという難しさもあります。

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 今年、早稲田で駅伝監督就任3年目になり、ある程度チームとしての結果を求められていると感じています。「個の強化」を早稲田は重んじていますが、個が集合してチームとして結果を出すときが来た。秋からの3大学生駅伝(出雲、全日本、箱根)では優勝争いに関わる順位……3位以内を目指したいと思っています。昨年までの結果ではまだ5位以内にも入ってないんですが、ひとつ高い目標設定をしています。

 パリ五輪には、マラソンに大迫君、1万メートルには太田(智樹)くん、競歩に髙橋(和生)くんというOBが出場します。私が学生のとき、1991年に東京で世界陸上があり、早稲田のOB選手の応援に行き、「いつかこういうところに立ちたい」という気持ちで自分を鼓舞していたので、箱根駅伝はやはり最終ゴールではなく、早稲田の選手にはその先を見てほしい。

 よく早稲田は「推薦組」と「一般組」がいると言われるんですが、そういう分け方じゃなくて、世界を目指す人と、箱根駅伝を目指す人っていうところで、最終目標や取り組み方が違っても、夏以降はまずは箱根駅伝がターゲットです。それを乗り越えて越えて、やがて世界へと羽ばたけるよう、チーム一丸で一緒になってしっかり目標を達成できればいいですね。

 

花田勝彦(はなだ・かつひこ)
1971年京都市生まれ。滋賀県立彦根東高校を経て早稲田大学人間科学部へ。3年時には箱根駅伝に総合優勝、4区区間賞(区間新)を獲得。94年ヱスビー食品陸上部へ進み、96年アトランタ五輪で10000m、97年アテネ世界陸上でマラソン、2000年シドニー五輪で5000m・10000m日本代表。2004年に引退後は上武大学准教授・上武大学駅伝部監督に就任、同大学を08年箱根駅伝初出場に導き、以来8年連続で本選出場。16年GMOインターネットグループ陸上部監督に就任。22年6月より早稲田大学競走部駅伝監督に就任。

俺たちの箱根駅伝 上

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池井戸 潤

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俺たちの箱根駅伝 下

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