キャラクター人気投票で「かっちゃん」が8連続1位だった理由
上記のように万人が楽しめるバトル漫画の中に、作者の生々しい苦悩が見え隠れするのが『ヒロアカ』の魅力だったが、最終的に読者人気を一番掴んでいたのが、デクでも死枯木でもなく、かっちゃんこと爆豪勝己だったことが、本作の一番の面白さだろう。
これまで『ヒロアカ』ではキャラクターの人気投票が9回おこなわれている。
第1回は主人公のデクが1位だったが、第2回から9回は爆豪が連続1位を獲得しており、得票数を見ると読者人気がダントツだったことがよくわかる。
爆豪は「爆破」の個性を持つヒーローで、当初はデクに辛く当たるいじめっ子として登場した。同じヒーロー科に進学したデクとは犬猿の仲で、ことあるごとに衝突するのだが、幼い時から、強くて自信満々の自分を周囲に見せようとしていた爆豪は、幼少期に川に落ちた自分を心配して助けようとしたデクを疎ましく思い、いじめることで否定しようとしていたことが次第に明らかとなる。
傲慢ないじめっ子だった爆豪は、本来なら読者に嫌われてもおかしくないキャラクターだ。他の漫画だったら序盤のかませ犬としてすぐに退場するか、逆に闇落ちしてヴィランになる展開が用意されていてもおかしくなかったと思う。
しかし堀越は、いじめっ子の爆豪の内面を掘り下げることで彼の弱さを見つめ心身ともに成長していく姿を丁寧に追い続けた。そもそも第1話で、「個性」を持たないデクが我が身を顧みずに助けようとした相手がヴィランに捕まった爆豪だったことを踏まえると、ヒーローが本当に救わないといけないのは、爆豪のような少年だと作者は思っていたのかもしれない。
その時のデクの行動は「ヴィランであっても助けたい」という壮大なヒーロー観へと繋がっていくのだが、いじめっ子だった爆豪の反省と成長を描けたことこそが『ヒロアカ』の最大の功績だったのではないかと思う。