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小柄な森選手でもメダルの可能性は大

――妹のように可愛がっていた、同じ茨城県出身の森選手もパリ五輪に出場します。

野口 彼女は中学の頃から代表に入っていて、試合にも一緒に出ていたのでよく知る仲ですが、私が引退した後も変わらない付き合いをさせてもらっています。家も近いし、私の実家にあるクライミング施設に練習しに来てくれるので、とても身近な存在ですね。

野口さんと同じ茨城県出身の森秋彩選手20歳 ©時事通信社

 彼女は智亜と反対でリードが得意。リードだけだったら、世界トップのヤンヤ・ガンブレット(スロベニア)にも勝つ可能性はあるのですが、リードと比べるとボルダリングがそこまで得意とは言えない。ボルダリングは身体能力で遠くまで距離を出さなきゃならないので、ある程度の身長やパワーが必要です。

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 でも、森選手は154cmと小柄で、どうしてもハンディはある。そこを彼女の技術でどうカバーできるか。今はリードとボルダリング2種目とも強いヤンヤが圧倒的な力を誇っていますが、去年の世界選手権では、森選手がリードで圧勝し銅メダルを獲得している。パリでもメダルの可能性は大です。 

2021年東京五輪ではスロベニア代表のヤンヤ・ガンブレットが金メダルに。右が野口さん、左が野中生萌選手 ©JMPA

ボルダリングでいかに高得点を取れるか

――楢﨑選手は、パリ五輪ではどんな戦い方をしますか。

野口 心身共にかなり上向いているので、期待していただいてもいいと思います。勝つためには最初の種目のボルダリングでいかに高い得点が取れるか。出場選手はみな同じようなことを考えていると思うけど、智亜は最大の100点に近い点数を獲る実力がある。ボルダリングで2位をいかに引き離すかがカギですね。

 リードはどんな課題が出されるか当日まで分からない。壁の上部になると1手4点ずつ離されてしまいます。やっぱり何手食らいついていけるかが勝負でしょうね。

 例えばボルダーの一完登だと25点ぐらい離せるのですが、リードの上部で5手足りないと20点ほど巻き返されちゃう。6手だと24点。だからボルダリングで大きく離してアドバンテージを持っておくと、リードの時に余裕を持って臨めるはずです。

©松本輝一/文藝春秋

 私も現地に応援に行きますけど、智亜だけでなく4人の日本人選手には、メダルの場所にまで登攀して欲しいです。