パリオリンピックの予選リーグを突破したサッカー男子日本代表は、8月2日(日本時間3日)、準々決勝でスペインと対戦。0-3で敗れ、2大会連続の準決勝進出とはならなかった。

 元日本代表で、現在はサッカー解説者として活躍する城彰二氏は、スペイン戦の戦いぶりをどう見たのか。話を聞いた。

スペインに敗れて涙を流すGKの小久保玲央ブライアン ©JMPA

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細谷のゴールが取り消されたのは不運だった

――決勝トーナメント1回戦のスペイン戦は、0-3の完敗でした。

城彰二(以下、城) スペイン戦は、レベルの差に愕然としました。3戦全勝したグループリーグの戦いを見て、もっと戦えるかなと思ったけど、いざ戦ってみると、ワンランク上の世界との差がスコアにも内容にも出た感じです。

――前半11分に先制された後、前半40分、細谷真大選手が相手DFを背負って反転してゴールを決めました。これはVARによって取り消されましたが、相手DFを背負ってのオフサイドは驚きでした。

 決めた瞬間は、すごいなって思いましたし、これで試合がわからなくなったと思いました。スペインの選手もやられたという表情をしていたので、かなりインパクトがあったと思います。

 でも、よく見てみると、藤田(譲瑠チマ)が細谷にパスを出した瞬間、相手が左側に体を寄せてブロックしていたんです。その時、踏ん張った細谷の右足のつま先が出てしまった。VARがある以上、映像で判断されるのは仕方ないですが、ミリ単位での取り消しは細谷にとっても日本にとっても不運としかいいようがなかったです。

細谷のゴールはオフサイド判定で取り消しに ©JMPA

――パスを受けてからゴールまでの流れは素晴らしかった。

 藤田が狭いところにパスを通して、細谷が懐深くキープ。腕を使って相手をブロックしながら、振り向きざまにシュートを決めたんですが、彼のフィジカルの強さ、ゴール感覚の鋭さが見えたシーンでした。細谷は体幹が強いので難しい体勢でもシュートが打てるし、スピードとパワーがある。でも、すぐにA代表のエースになれるかというと簡単ではない。

――どういうところに課題があるのでしょうか。

 大事なところでのイージーミスが多いんです。この試合でも前半52分、FKからヘディングシュートを左ポストに当てたり、後半36分、GKとの1対1のシーンで防がれたシュートは、巻いて決める感覚やニアを打ち抜くセンスがあれば決められた。

 でも、体の向きでGKにシュートコースを読まれて、左手だけで止められた。オフサイドで取り消されたゴールのように最高のプレーをする時もあれば、イージーなシュートミスをする時もあり、大事なシーンで決められない。それではFWとしての評価が高くならないですし、監督は使いにくくなってしまう。シュートの正確性を磨き、ゴールのバリエーションを増やしていかないとA代表では難しいと思います。