「私、誰にも迷惑かけてないのに」

――先生とはどんなことを話し合ったのですか。

 話し合いというか、一方的に向こうの言い分を聞いているだけでした。先生は「あなたがAV女優をしていることはまだ誰にも言ってない」と言っていたのに、その話し合いの場には、その他になぜか先生と仲のいい生徒さんもいました。「そんなことをしてたら、今までバレエを彩ちゃん(仮名)に教えてきた先生も悲しいと思うよ」とか「特に年配の人が知ったら、嫌やと思うからこの教室で指導するのはやめて」「バレエをそんなことに使ってほしくない」などと言われました。終始蔑むような目で、まるで汚いモノを見るかのような表情でした。

――反論はしなかったのですか。

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 手が震えて、言いたいことの1割も言えませんでした。謝りたくないのに「黙っていて、すみませんでした」と、頭を下げていました。心の中では「私、誰にも迷惑かけてないのに、なんでこんなこと言われるんやろ。発表会の時は必死で手伝ったり、ボランティアみたいなこともいっぱいしてきたのに、私がAV女優やと知った途端、こうやって手のひらを返すんか」と、ふつふつと怒りが込み上げてきているのに、悔しさからなのか、頭がくらくらして貧血の時のように目が回ってしまい、言われるがままの状態でした。

――会社やバレエ講師を辞めることになった経緯をXで発信されましたよね。何かきっかけがあったんですか?

 Xへの投稿は事務所の社長からの提案でした。会社にバレた時にめっちゃ動揺して、社長に相談したんです。そうしたら「よし、それを全部Xに書こう」と言われました。SNSをやったことがない私は最初、「へ? Xに書く? 自分のこと書くなんて嫌やな」と思ったんですけど、結果、書くことで怒りを鎮静することができましたし、今思えば、あれが転機となりました。

 

SNSでの誹謗中傷

――バレエ講師を辞めさせられた投稿は閲覧数が4000万を超えたそうですね。SNSでの反響はどうでしたか。

 色々な意見が沸き上がって、“炎上状態”になりました。バレエをしている子供の母親という人からは〈呪い殺すぞ〉というDMが来ましたし、〈灰になって死ね〉とか〈女のクズ、人間のクズ〉という攻撃的な内容も多かった。〈バレエを性的なものにするなんて、神経狂ってる。子供たちが一番の被害者〉という意見もありました。

――そうしたSNSでの誹謗中傷は辛かったですか。

 そうですね。でも、最初は割と冷静に見ていました。この時、社長が毎日のように電話をくれて、「そんなこと言う人はアホや」と怒ってくれていたのも大きかった。実は私にとって一番きつかったのは、どんな攻撃的な言葉よりもバレエの技量についてのコメントでした。これまでの経歴として、バレリーナと謳っている以上、自分のバレエ動画をアップロードして見られるようにしていたのですが、その動画について、見ず知らずの人たちから〈こいつほんまに講師なの?〉とか〈バレエはど素人すぎて見てられない〉って。自分が一番分かってます、図星です。それでも、「あんたら私のバレエに対する思いを何も知らんやろ!」って、気持ちがぐしゃぐしゃになってしまいました。