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――その時の気持ちは著書の中で〈脳みそを使わず言葉を放つな〉〈半導体の無駄使いだわ〉などと、リケジョらしい言葉で綴られています。

 あの文章は、その気持ちがぐしゃぐしゃになった時にもう抑えきれなくなって、うわーって、ノートに殴り書きしたものです。一人では耐え切れず、それを社長に送ったら、社長が「傑作やな。これはいつか世に出そう」と言ったんです。その言葉ですごく気持ちが軽くなりました。しかも本当に本になった! すごいですよね。こうやって自分の気持ちを吐き出す場所があって、それを誰かに見てもらえるというのはすごく幸せなことだと思います。

――SNSで攻撃をされた時、自分を責めないためにはどうすればいいと思いますか。

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 「傑作やな」と言ってくれる人がいたので、私は運がよかったんやと思います。なので、そういう思考に持っていってくれる人に相談できれば一番いい。多くの見えない人から攻撃されて追いつめられている時、当事者は冷静にはなれません。「大丈夫?」と言われても不安になるだけ。無責任に心配する言葉よりも、「今の状況最高やん」と、発想を転換するような一言が当事者を救うことがあると思います。

 

私は両親に嘘をつき続けている

――ご両親はAV女優に転身したことをご存じなんですか?

 いや、おそらくまだ知らないですね。自叙伝を出版しましたし、これまで雑誌やウェブでインタビューも受けてきましたが、何も言われたことがありません。2人とも、SNSもまったくやらないんです。両親が知るべきか知らないままでいるべきか、私はずっとずっと考えています。母は涙もろくて、今でも私と別れる時に必ず泣くんです。少し前までは、その姿を見て「もしかしたら知ってて黙っているんじゃないか」と罪悪感に襲われることもありました。でも、この前のゴールデンウィークに帰省した時に思ったのは、やっぱり知らないんだなって。

――なぜそう思ったんですか?

 私は昨年の9月に大阪から東京に引っ越してきたのですが、両親には会社を辞めたことも伝えておらず、「東京へ転勤になった」と嘘をつきました。母は「満員電車、大変でしょう」とか「土日はゆっくりできてるの?」と素直に聞いてきます。その聞き方に他意がなかったので、まだ知らないんやな、と思いました。私は両親に嘘をつき続けている。これからどんどん言えないことが増えていくんやろうな、と思います。

 

撮影=原田達夫/文藝春秋