――会社を辞めたこと、AV女優になったことをまだ話せていない親御さんが、この本を見ることを想像したことはありますか。
藤 あります。というかずっとそれを考えながら書いていました。書いている段階では「この本をいつか両親に渡したい」という気持ちもあったんです。これを読めば、AV女優になったショックよりも納得してくれる部分の方が大きいんじゃないかなって。でも、今は知らないなら知らないままで、そのままいてくれた方がいい、と思い直しました。
――思い直した理由は?
藤 最初は、「この仕事を選んだ私の気持ちをわかってほしい」と思っていたんです。でも、それは自分のエゴのような気もしてきて……。両親からしたら、娘がセックスを生業にしていることを突然告げられて、これから先の何十年、抱え続けて生きるのは酷です。知らないまま、このまま幸せでいてほしいと。
娘がAV女優だと知ったら
――娘がAV女優だと知ったら幸せではなくなると思いますか。
藤 うん……。そうですね、私はそう思ってしまいます。私の父は、私が高校生の時に彼氏と歩いている所を見ただけで、1週間口をきいてくれなかったほど堅い人。過保護すぎるくらいに大事に育ててもらいました。私は「AVに偏見はない」と言っているわりに、両親に自分のやっていることが言えません。自分の中にいつまでも矛盾があって、そこをずっと行き来している気がします。
――これからもご両親が知ることはないのでしょうか。
藤 もし気がついてしまって、私に聞いてきてくれたら、そこできちんと話します。自分からあえて言うことはしません。兄とは世代も近いので、もしかしたらいつか腹を割って話す日がくるかもしれませんが、両親にはできたら一生隠し通したいです。母はよく私に「あなたが元気で幸せなら、それだけで良い」と言います。だから私は、これからずっと元気で幸せでいようと思います。
撮影=原田達夫/文藝春秋