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伝統の押し付けはなかった

コムアイ 感覚を伝えるのが本当に難しいので、滞在中に付けていた日記をもとに一度まとまった形で世に出したいなと思って、実は今本を執筆中なんですけど。

 まず、思った以上に柔軟なのがアマゾンらしさなのかな。「私たちの伝統ではこうだから、絶対にこうしなさい」っていう押し付けはなかったです。「私たちはこういうふうにやるんだよ」と教わって「なるほど。じゃあ、こういうふうにやるのはダメ?」とか聞くと、「ああ、それもとてもいいんだよ」みたいな感じで。矛盾が存在しない?(笑)

 お産の方法に関しても、アドバイスはしてくれるんですよ。膝を開いて梁からぶら下がった状態で産む方法が一番多いって。一応、それで「ウ~ン」って踏ん張っていたんですけど、私はあまりうまくいかなくて。

 結局、しゃがんで息むのがやりやすかったです。「これでもいい?」と聞くと、「うん、それがいいよ!」と。キリスト教も信じるけどシャーマンも信じてる、みたいなね。

 

ーー「いま8ヶ月です」など、アニータさんには伝えてはいたのですか。

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コムアイ 8ヶ月なのは言ったけど、細かい週数は言ってなくて。もう「時が来たら産まれるから」みたいな感じだった。お腹を触って「ちゃんと育ってる、今週かな? 来週かな?」とかって言って。触って、頭の成長具合や姿勢なんかを見てましたね。

ーー陣痛はどれぐらい続きました?

コムアイ 2日ぐらいあったかな。寝れないし、食べれないし。私、こんなに食いしん坊で眠るのが超好きなのに、食べたくない、眠れないのはなんでだろうって。

お祈りしてくれたり、薬草をお腹に塗ってくれたり

ーーそんな状態のコムアイさんを見て、アニータさんは。

コムアイ 絶対に産めるから大丈夫と繰り返してくれていましたが、外国人は初めてだから内心すごく心配していたんじゃないかと思います。村の女性曰く、何日もかかるのはワンピス族でも普通みたいで、「初めてでしょう? 初めての子は2日か3日はかかるよ、すっごく痛いよー」って脅されました(笑)。

 産む前は周りに「痛いよ」って言われても「私はスッと産むだろうな」と思ってたけど、めちゃくちゃ時間がかかったし、痛かったし。陣痛が続いてる間、アニータが産屋の隅でお祈りしてくれてたのがすごく印象に残っています。薬草をお腹に塗ってくれたりもして。

 あ、急に思い出したけど、お産が進んでない時にアニータが乳首を摘んできましたね。ズン、ズンみたいな感じで。

 

ーー母乳の出などに関係するとか?

太田 子宮を刺激するんです。

コムアイ 子宮の収縮と赤ちゃんがおっぱいを吸うのって、ホルモンが連動してるからみたいで。アニータは「ホルモンが」とか説明はしないですけどね。ただ、黙ってズン、ズンと。

 長年そうしてきたことでお産が進んだ経験があるから、やってくれたんだと思います。いきなり真顔でやってきたので笑いそうになりましたが、そんな余裕ももはやなかったですね。