アーティストのコムアイ(32)と映像作家・文化人類学者の太田光海(34)。

 夫婦ではなく恋人同士で子供を迎えることを決意し、2023年7月にアマゾンの村で出産をした彼らに、村までの過酷な道のり、村の人々の生活様式、出産時の様子などについて、話を聞いた。(全3回の1回目/続きを読む)

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ペルーの首都から陸路で4日かかるアマゾンの村で出産

ーーアマゾンは南米大陸に大きく広がっている熱帯雨林を指しますが、どのあたりで出産を。

コムアイ ペルーの、エクアドルとの国境に近い村です。

コムアイさんと太田光海さん

ーーその村は、ペルーの首都リマから遠いんですか。

コムアイ 地球にこんな遠いとこあるんだー、って。

太田光海(以下、太田) リマからだと、行くのは4日かかりますね。

ーー陸路で。

コムアイ アマゾンに近い街に飛行場があって、飛行機を使えば1日短縮できて3日で行けたはずなんです。でも、滑走路がダメになっているとかで、1年以上閉まっちゃってて。

太田 それで、バスで20時間かけて移動して。

コムアイ なんかずっと山を登ってるなーと思って、やたら絶景で雲より上にいるから、ここ標高どれくらい?と聞いたら4000mくらいだって言われて。天城越えならぬアンデス越え(笑)。また山を下って砂漠っぽい街も通って。

 

「大変だったけど、すごく楽しかったな」「生きてる感じがした」

ーーアマゾンに向かった時は、たしか妊娠8ヶ月ですよね。体力的に大変だったのでは。

コムアイ 乗り物に座ってるだけなんで、そこまででは。山の食堂でいきなり降ろされてみんなで昼食を食べたんですが、そこのカルド・デ・ガジーナがすごく美味しかった。

 でももう二度とたどりつけないだろうなあ。あとペルーと言えばインカ帝国ですけど、山の方にはその末裔のケチュア族の人たちが住んでて、おばちゃんたちがポテトチップスのように揚げたバナナをバスの外から売りに来るんです。そういう面も覗けたから、むしろ陸路でよかったかもしれない。ただ、車の移動で1日だけ大変なところがあって。

太田 舗装されてない道で、行く前からそこが山場だなと思ってました。

ーーそこもバスで。

太田 タクシーです。でも街に走ってるようなのではなくて、言ってみれば現地で宿の人に紹介してもらった運転が上手い友達ですね。

ーーその車で進んだのは、断崖絶壁にあるような道ですか。落ちたら間違いなくヤバいみたいな。

太田 そう言われれば、そういう道ですね。ガードレールなんてないし。

コムアイ とにかく道が悪いから、とんでもなく揺れるんですよね。両側のドアにぶつかるくらい。

 なんか大変だったけど、すごく楽しかったな。道で1回車が泥にハマっちゃったんですけど、その場にいた知らない人たちと力を合わせてどうにかしたり。生きてる感じがした。私、東京にいると、正直生きてる感じがあんまりしてないんですよ。

 でも、全力疾走した時とか、何かスポーツした時に「ああ、生きてる」ってなるじゃないですか。その感覚を大事にしたい。