アーティストのコムアイ(32)と映像作家・文化人類学者の太田光海(34)。

 2023年7月にアマゾンの村で出産をした彼らに、夫婦ではなく恋人同士で子供を迎えるスタイルを選んだ理由、育児の分担、日本で子育てするうえで感じた違和感などについて、話を聞いた。(全3回目の3回目/最初から読む)

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恋人同士のままで子供を持つスタイルを選んだ理由

ーー先程、「恋人同士という形のままで子供を産みますみたいなことを話した時も、ちょびっと炎上したんです」とおっしゃっていましたが、おふたりが恋人同士のままで子供を持つスタイルを選んだ理由についてお話を聞かせてください。

太田光海(以下、太田) まず、僕の立場から話をすると、僕自身の親が事実婚で。正確に言うと「ペーパー離婚※」というやつなんですけど。ちゃんとした結婚式は挙げず、両親が音楽をやっていたから、友人を集めてライブ・パーティーみたいなもので祝ったそうなんです。だから、ウェディングドレスを着て式を挙げてとか、披露宴や二次会があって、といった発想のない家庭環境だったんですよ。

 そういう環境で育ったので、結婚にこだわりがなくて、社会で当然視されている結婚にまつわる文化や概念みたいなものにもともと違和感を抱いていて。

※実質的な夫婦関係を継続したまま書類上の離婚手続きを行うこと

アーティストのコムアイと映像作家・文化人類学者の太田光海

ーー太田さんは海外で暮らしていたそうですが、その影響などは。

太田 ありますね。フランスとイギリスにそれぞれ4年ほど、高校時代にはオランダにも1年間住んでましたけど、特にフランスは婚外子などがまったく問題視されない社会でしたから。そもそも現地の僕ら世代の若者は「結婚とか、いちいちめんどくせえわ」みたいなムードもすごくあったので。

 そういうなかで20代を過ごした結果、結婚にこだわらなくていい恋愛や人間関係のあり方が、自分の中に染み込んでいたというのは間違いなくあります。

ーーコムアイさんは。

コムアイ 同性婚を認めていないこととか、どちらかが名字を変えないといけないとか、今の婚姻制度がとても古いものに感じるっていうのはあります。でもぶっちゃけると、すごいシンプルで。関係が破綻しているのに、結婚していることが歯止めになっているから別れないでいる人も結構いるじゃないですか。離婚に時間がかかったり、慰謝料の取り合いになっている話も聞くし。なんか、そういうのがめちゃ怖くて。籍を入れてなかったら、もっと簡単に別れられちゃう。それって悪いことじゃないなって。

 じゃあ、なんで私たちが一緒にいるのかというと、相手のことが好きだし、一緒にいたいから。それでしか成り立たないフラジャイルさ、脆さのほうが安心感がある。お互いに信頼を築けなかったらポロッと別れちゃう、いつでも別れられる設定にしておいたほうが、甘んじずに、私は相手を大切にできるかなと思って。離婚したくないからじゃなくて、一緒にいたいから、子供を一緒に育てたいから、という理由で向き合いたいなという気持ちです。