炎上に感じたのは、傷付いた人たちの怨念
ーーネットやSNSで誹謗中傷のコメントが多かったと思いますが。
太田 僕、最初の3つぐらい見て、「やめておこう」と思って。ほぼ読んでないです。
コムアイ 「コムちゃん、見なくていいよ」って言ってたよね。
太田 わりと僕側への誹謗中傷も多い印象で、特にTwitter(現・X)がものすごいことになってました。僕がヤバい男で、コムちゃんを闇に引きずり込んでみたいな。
なんだっけ、「2台の車にお前の足を縛り付けて引っ張って引き裂いてやる」みたいなよくわかんないけどひどいツイートとかありましたよ。もう書いてあることは大体分かったから別にいいや、みたいな感じでしたけど。
ーーひどすぎます。
太田 僕を攻撃してたのは、出産経験がトラウマになってしまっていたり、男性のせいで心に傷を負った経験がある女性たちが多い気がしました。その怨念を全部僕にぶち当ててる感じで。あと、方針を決めているのは男性の僕だという認識が強かったように思います。まるでコムちゃんが主体的に判断していないかのような見方が多くて。
もちろん誹謗中傷を受けるのは気持ちよくないですよ。でもそれだけ傷付いた人たちの怨念が溜まってるんだということは感じて、怒りというよりはまだまだやるべきことがたくさんあるなと気持ちが引き締まった感じです。
当たり前ですけど、出産に関してはコムちゃんの希望が僕にとっては全てなので。彼女が「こういう環境で産めたらいいな」と話してくれたことに対して、僕は全力で向き合いながら一緒に最適な方法を探したまでです。男の僕が「危ないから日本の病院で産んでほしい」と言うことは簡単ですけど。出産に関して女性の希望を最大限聞くということがまだ当たり前になってないんだろうか? と思わざるを得なかったですね。
既存の男女の関係性を揺るがしたことへの反応なのかなと…
ーー出産に関して、女性の主体性が保たれていないこともあると。
太田 妊婦に対する様々な制度的・社会的暴力を「オブステトリック・バイオレンス」と定義して検証する流れが世界的に生まれつつありますけど、僕はコムちゃんの意向を色々と聞くうちに、コムちゃんはおそらく感覚的にその暴力に対するオルタナティブを探そうとしてるんだなと思いました。
ただ、コムちゃん自身への誹謗中傷ももちろん多くて。さっき言ったことと矛盾するようですけど、やっぱり女性が好きな場所で好きなやり方で出産して好きなように生きるということに対しての社会の嫌悪感もすごく出ていたなと。いろんな意味で、日本での既存の男女の関係性を僕らが揺るがしたことへの反応なのかなと思います。
あとは、南米とか先住民の人たちに対する差別感情をすごく感じました。まるで紛争地帯に突っ込んでいくみたいな捉え方だったり、とにかく遅れていて技術も知識もない野蛮な場所に行くみたいな発想が根底にあるなと。
世界にはいわゆる西洋科学以外の知識のあり方も存在するし、むしろそっちを援用する方が良い場合もある。見方によっては1周回ってアマゾンの方が進んでることもあるわけです。そのあたりは改めて伝えていく必要があるなと。