――ほかのブランドはなかったんですか?
八木沢 マンシングウェアやVANなんかも人気がありました。ただ、ラコステには何かこう、特別なオーラがあったんですよ。実際、値段も他のブランドより高かったですし。
――その「特別なオーラ」の正体が知りたいんです!
八木沢 では、原宿キャシディで扱っている「L.12.12」で説明しましょう。ラコステの代表作であるL.12.12は、ポロシャツのお手本であり、そして祖先でもあるモデルです。
日本では「エル・イチニ・イチニ」と呼ばれていますが、正式な読み方は「エル・トゥウェルブ・トゥウェルブ」。LはラコステのLで、最初の1は鹿の子素材、次の2は半袖を指し、最後の12は試作品の番号を指しているとか。
サラッとした肌触りや伸縮性が特長
――一体、何がいいのですか?
八木沢 何といっても着心地がいい。ボディは「鹿の子」と呼ばれるコットン100%のニット生地でできています。サラッとした肌触りや伸縮性が特長です。
特にL.12.12には自社製の鹿の子が使われていて、編み機の針の懐が深く、カーブが強いため、表面にくっきりとした凹凸が生まれます。これによって肌への接触が減ることで、汗をかいてもサラサラとした肌触りが持続するんです。
――原料となるコットン自体も特別なのですか?
八木沢 スーピマコットンという超長綿が使われています。コットンは繊維の長さが長いほど質が高くなるため、繊維長が35mmを超えるものをこう呼びます。世界に流通するコットンに占める割合はたったの1%ほどですから、いかに貴重なものかがわかるでしょう。
さらにスーピマコットンの中でも、質によって等級があり、ラコステは最高ランクのものを使用しています。
キレイな状態が長続きするさまざまな工夫
――ただ、着心地が良くて、高級感のあるポロシャツなら、ほかにも探せばあると思うのですが。
八木沢 そうなんですよ。ただ、L.12.12が他の高級ポロシャツと違うのは、キレイな状態が長続きする点にあると思います。
このL.12.12の鹿の子には、2本の糸を撚り合わせて1本にした双糸が使用されています。双糸を使用することで、単糸で編んだ鹿の子よりも強度や耐久性が向上するんです。
ほかにも、肩の裏側をオリジナルのテープで補強したり、独自の縫製で襟の立体感をキープしたり、さまざまな工夫が凝らされています。
昔のモデルも、特殊な染料で染められた糸や形態安定加工によって、色褪せや型崩れがしにくいように作られていました。
ちなみに私が持っている1980年代のL.12.12も、目立った色褪せや型崩れが見られません。
――ディテールにも特別な点はありますか?
八木沢 前立てのボタンです。L.12.12には高級ドレスシャツに使われる天然の貝ボタンが採用されています。また、ボディの色みによって、白蝶貝と黒蝶貝を使い分けているのもラコステのこだわり。
細かい話ですが、上の前立ては、身頃から2mm程度横に出るように設計されているんです。こうすることで、一番上までボタンを閉めた際に体を動かしても、下の前立てが見えないんです。