「クールビズ」という言葉はどこかへ行ってしまったが、ビジネススタイルのカジュアル化は依然として進んでいる。そんな中、どんどん需要が高まっている服が「ポロシャツ」だ。襟のついたニット素材のトップスは、Tシャツだとちょっとカジュアル過ぎ、かといってワイシャツだと堅いかも……といったときにちょうどよく、休日はもちろん、ビジネスウェアとしても重宝されている。

 では、数あるポロシャツの中で、高くてもどれがもっとも買う価値があるのか? 50年近くポロシャツを着続けてきた原宿キャシディのレジェンド店長、八木沢博幸さんに聞いた。(取材・構成/押条良太)

 

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ポロシャツのルーツはテニスウェア

――そもそもポロシャツってどんな服なのですか? 

八木沢博幸氏(以下、八木沢) 簡単にいうと、半袖の襟付きで、首元の前立てをボタンで留めるタイプのシャツのことです。英語での表記は「Polo Shirts」。その名前は英国の馬術競技に由来しますが、もともとは1927年にプロテニスプレイヤーのルネ・ラコステさんが考案したニット素材のウェアがルーツといわれています。

八木沢博幸さん

ポロシャツのオリジンといわれるラコステ

――実際にテニスの試合で使われていたのですか?

八木沢 1920年代のテニスプレイヤーは、ダブダブのワイシャツのような動きにくい服でプレーしていたそう。そこでルネ・ラコステさんはポロ競技のユニフォームに使われていたシャツをヒントにして、襟付きのポロシャツを作りました。ストレッチのきいたニット素材で、着丈も短くシルエットもすっきり。動きやすいウェアはすぐに話題になりました。

 ただ、当時のテニス界は服装に対する考え方が保守的で、「そんなにボディラインがはっきり出る服などけしからん!」と言われたそうですが、ルネ・ラコステさんは屈することなく、試合で着続けました。すると徐々にテニスプレイヤーたちの間に浸透していきました。

 ちなみにラコステといえば、左胸のワニマークのロゴが有名ですが、現在のポロシャツに多く見られるワンポイントのデザインはラコステが発祥といわれています。

ロゴマークのワニは食らいついたら離さない、ねばり強いプレーを信条とするルネ・ラコステのニックネームに由来する。ワッペンはワニの縁取りの色である黒い糸で縫い付けられ、幅は創業以来3cmと決められている。

日本ではアイビーブームをきっかけにブレイク

――優等生なイメージでしたが、もともとは反骨精神のある服だったんですね。でも、なぜテニスのユニフォームがカジュアルウェアに?

八木沢 アメリカのアイビーリーグやプレップスクールに通う学生たちがポロシャツを着始めたことがきっかけです。日本で広まったのは1950~60年代のアイビーブームの時。「メンズクラブ」などの雑誌で紹介されて、イケてるカジュアルウェアとして広まっていきました。

 私が初めてラコステのポロシャツを着たのは、たしか1970年代の終わり頃でした。ミドリヤ(原宿キャシディの親会社で、大井町にお店があった)に就職した頃で、当時はよくフレンチ・ラコステと呼ばれたフランス製のものをよく着ていました。