幾度かのブームを経て、いまや全年代から愛されるお酒として確固たる地位を築いているといっても過言ではない「ウイスキー」。しかし、その種類や味わいに精通している人は、そこまで多くないのではないだろうか。
ここでは、若鶴酒造株式会社代表取締役社長であり、三郎丸蒸留所のマスターブレンダーとしてウイスキー造りに取り組む稲垣貴彦氏の著書『ジャパニーズウイスキー入門 現場から見た熱狂の舞台裏』(角川新書)の一部を抜粋。スコッチウイスキーが世界中で人気を博し続ける理由に迫っていく。(全2回の1回目/続きを読む)
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世界のウイスキーとその歴史
みなさんは「世界五大ウイスキー」という言葉を知っていますか?
これらは世界的なウイスキーの産地とされていて、一般的に、「スコッチウイスキー」「アイリッシュウイスキー」「アメリカンウイスキー」「カナディアンウイスキー」「ジャパニーズウイスキー」と言われています。この言葉がいつから使われるようになったかは定かではないのですが、ここに「ジャパニーズ」が入っていることを意外に思われる人も多いでしょう。
世界における日本のウイスキーの存在感が増したのは、2001年のベスト・オブ・ザ・ベスト(現在のワールド・ウイスキー・アワード)でシングルカスク余市10年が世界一になってからと言っていいと思います。そこから、ジャパニーズウイスキーの入賞が相次ぐようになり、現在では自信をもって世界五大ウイスキーの一つと言えるまでになっているのです。逆に言えば、少し前まで日本のウイスキーは他の生産地に比べれば歴史も浅く、基準が緩く、また品質も及ばないとみなされていたともいえます。
ここからは、ジャパニーズウイスキー以外の五大ウイスキーの特徴を紹介していきます。
圧倒的な生産量と歴史をもつスコッチウイスキー
まずは、なんといっても「スコッチウイスキー」です。皆さんにも一番なじみがあるウイスキーではないでしょうか。その名の通りスコットランドで製造されたウイスキーです。
その規模は圧倒的で、2023年度のスコッチウイスキーの輸出金額は1兆円以上であり、ジャパニーズウイスキーの輸出額501億円の17倍以上が世界に輸出されているのです。世界のウイスキーの生産量に占める割合は約7割とも言われる、圧倒的な存在です。