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 なお、スコッチウイスキーの定義は、英国の法律で以下のように定められています。

 スコッチウイスキーの定義

(1)水、酵母、大麦麦芽(モルト)およびその他の穀物を原料とする

(2)スコットランドの蒸留所で糖化と発酵、蒸留を行う

(3)アルコール度数94.8%以下で蒸留

(4)容量700リットル以下のオーク樽に詰める

(5)スコットランド国内の保税倉庫で3年以上熟成させる

(6)水と(色調整のための)スピリットカラメル以外の添加は不可

(7)アルコール度数40%以上で瓶詰めする

スコッチウイスキーの歴史

 1494年のスコットランド王室会計(財務)記録に、次のような一節が残っています。

 修道士ジョン・コーに麦芽8ボルを与え、アクア・ヴィテ(アクアビテ/生命の水の意味)を造らしむ……

 ウイスキー好きなら一度は聞いたことがあるかもしれません。これがウイスキーについて書かれた、文献上最古の記録だとされています。当然、スコットランドでは少なくともこれ以前からウイスキーの生産がされていたということです。生産が始まった当時の詳しいことはわかっていませんが、アイルランドから蒸留技術が伝わったとされています。ただし、その時代のウイスキーは現在のウイスキーのイメージからはかけ離れたものでした。樽熟成がされておらず、“一地域の荒々しい蒸留酒”にすぎなかったのです。

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 それが時代を経て“世界の酒”になるに至ったのは、ウイスキーの世界における三大発明(発見)がスコットランドで花開いたからだと考えられています。

 その三大発明とは、「樽熟成」「連続式蒸留機」「ブレンド」です。

樽熟成――三大発明(1)

 イギリス(グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国)はイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの四つの地域と国で構成されています。その歴史的な経緯は割愛しますが、イングランドがこの500年の間に民族や文化が違う国を併合してきたことによって生まれた対立は根深いものがあります。事あるごとにスコットランドの独立が叫ばれるのも、もともとは一つの国ではなかったからです。

 スコットランドがイングランドに併合されたのは1707年。イングランド政府はスコットランドの完全な統合を狙い文化を弾圧、ウイスキーにも重税を課しました。課税から逃れるため、酒造者は密造を行い、樽詰めしたウイスキーを山里深くに隠すようになります。ある日、その樽を開けてみると琥珀色でまろやかで豊かな香味をもつ酒に変化していた――これがウイスキーの樽熟成の始まりと言われています。

 ドラマチックかつ、スコットランドの反骨精神が表れたよくできた話と言えますが、実際はどうだったのでしょうか。