1ページ目から読む
5/5ページ目

 この発明はウイスキーの味そのものにも大きな影響を与えました。それまでの単式蒸留器では原料の個性が強く出るため、原料ごとにばらつきが生まれ、安定した品質のウイスキーを造ることができませんでした。連続式蒸留機は高濃度のアルコールを取り出せるため、原料に依存せずにクリーンな酒質を得ることができます。そのため安いコストで、安定した品質のグレーンウイスキーを大量に生み出すことができるようになったのです。逆にハイランド地方では、伝統的なポットスチルで蒸留したモルトウイスキーが残り続けました。

©makoto.hイメージマート

ブレンド――三大発明(3)

 グレーンウイスキーが造られるようになったことで、ウイスキーに大きな変化が訪れます。モルトウイスキーとグレーンウイスキーの混合による「ブレンデッドウイスキー」の誕生です。

 ブレンド創始者のアンドリュー・アッシャーは、1840年にザ・グレンリベットの独占販売権を得ました。このグレンリベットは言わずと知れた名高いウイスキーで、非常に売れ行きがよかったのですが、問題もありました。頻繁に欠品したり、味のばらつきがあったりしたのです。当時のウイスキーは樽から量り売りがされていたので、樽によって味も違えば、安定した出荷も望めませんでした。

ADVERTISEMENT

 その解決策としてアッシャーが考えたのが、異なる年代のグレンリベットを混合すること。そうすることで、より味を安定化させ、一定の品質を担保できるようになったのです。このようにモルトウイスキー同士を混合することを「ヴァッティング」と呼びます。1853年に最初のヴァッテッドモルトウイスキー「アッシャーズオールドヴァッテッドモルトグレンリベット」が発売され、大好評を得たそうです。

 その後、前述のように異なる蒸留所同士のブレンドが認められて、1860年にモルトとグレーンのブレンドによるウイスキー「ブレンデッドウイスキー」が誕生し、世界を席巻していきます。コストが安く、品質が安定したグレーンウイスキーと、多種多様な個性を持つモルトウイスキーをブレンドすることで、味に奥行きがあって多層な香味をもち、安定した品質のウイスキーをリーズナブルな価格で大量に供給できるようになりました。ここからスコッチウイスキー産業は王者としての道を歩み始めるのです。