ヴァイッド・ハリルホジッチは、誇り高き人である。怒りをぶつけながらも、最後は潔く去っていった。

 4月27日、都内にある日本記者クラブの会見場に集まった330人超の報道陣を前にして解任劇に対する自分の見解を示す一方で、これからの混乱を望んでいるわけではなかった。

「プレスのみなさんに一言申し上げたい」

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 会見の終わりに、彼はこう言った。

「私のことはどう書いてくれても構わない。だが、日本代表は窮地に陥っている。どうか彼らに準備の時間を与えてあげてほしい。日本代表には良いワールドカップにしてもらいたいと思う。そしてこれまで記者会見が終わるたびにみなさんから拍手をいただいてきた。心より感謝申し上げたい」

 私はまっとうに仕事をしてきたつもり。だから自分でけじめをつけ、自分のやり方で幕を引かせてもらう――。そんなプライドが伝わってくる会見だった。

 拍手とともに、去りぬ。花束を受け取り、拍手に包まれながら「前監督」は笑顔を浮かべて会場を後にした。

4月27日、「日本記者クラブ」で会見したハリルホジッチ氏 ©getty

「コミュニケーション不足」への反論

 4月7日にパリで日本サッカー協会の田嶋幸三会長に会い、解任を告げられた。その理由を尋ねると、「コミュニケーション不足」と伝えられたという。納得がいかなかった。選手とコミュニケーションを取ってきたつもり。それがなぜ「不足」と言われてしまうのか。そもそもなぜそれが解任の主要因となるのか、と。

 反論は正論だった。

「韓国戦の後に解任を考えたという話も聞いた。ならば少しは理解できる。つまりワールドカップよりも日韓戦のほうがいかに重要なのか分かっているつもりだからだ」

「西野さん(技術委員長、現在は後任の代表監督)は(先の欧州遠征で)『注意したほうがいい。選手が何か不満を漏らしている』と言いかけていたので、もし何か問題があったのなら、会長が事前に『こういう問題が起こっているからどうするんだ』と言ってくれればよかった。西野さん(技術委員長、現在は後任の代表監督)も警鐘を鳴らすなり、インフォメーションをくれれば良かった」

「(会長が)解雇する権利を持っているので、解雇に対して言うことはない。ただ、チームに問題があったのならその原因が何か、教えてほしかった。会長の決断は正しい。私がショックなのは問題が何かを誰も教えてくれなかったことだ」

「(解任の理由を)『ウクライナに負けたでしょ』とリザルトをバンと突きつけられたら理解できたと思う」