モノクロ写真をカラー化し、戦争体験者との対話を重ねながら、当時の失われた記憶を蘇らせる「記憶の解凍」プロジェクト。取り組みを書籍化した『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』(光文社新書)は各所に大きな反響を生んだ。

 共著者の一人、庭田杏珠さんが同プロジェクトを開始したのは、わずか15歳のときのこと。高校1年生の彼女は、どのような思いで取り組みを始めたのか。

 ここでは、「広島 蔦屋書店」にて、パネル展を開催していた庭田さん(現在、広島テレビ勤務)へのインタビューとともに、同書に掲載された写真の一部を紹介していく。

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庭田杏珠氏

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戦争の負の側面ばかりを受け取ってきたけど…

――「記憶の解凍」プロジェクトは15歳から始められたとのことですが、それ以前から平和関連の活動に積極的だったのでしょうか。

庭田 いえ、むしろ幼い頃は平和学習について苦手意識を持っている方でした。というのも、幼稚園の年長で最初に平和教育を受けたとき、リニューアル前の平和記念資料館で、当時展示されていた、おどろおどろしい蝋人形があまりにも衝撃的で……夜も眠れなくなるくらい怖くなってしまって。

 それが私にとっての平和学習の原体験でしたし、小学校に入学してからの平和教育でも“悲惨な体験”について見聞きすることが多かったので、戦争の負の側面ばかりを受け取っている印象がありました。

 
戦前、幼稚園での食事会 写真提供:今中圭介氏 カラー化:庭田杏珠

――そこから、ご自身で平和に関するプロジェクトを始動しようと思えるほど、情報を発信することに前向きになったのは何かきっかけがあったのでしょうか。

庭田 一つのきっかけは、小学5年生のときの平和学習で出合った、広島市の「平和記念公園めぐり〜原爆で失われた街・中島地区をたずねて」というパンフレットでした。

当時のパンフレット

 今の平和記念公園と被爆前の中島地区(注:現在の平和記念公園一帯)の地図が見比べられる構成になっていて、被爆前の市民の日常生活を捉えた白黒写真が掲載されていることに驚いたんです。