日本の株価、地価の高騰が続き、「資産バブル」が訪れている。その根底には何があるのか。BNPパリパ証券チーフエコノミストの河野龍太郎氏、エコノミストの柯隆氏、不動産関連投資のアドバイザリー業務を行うEminence Partners代表の木下泰氏が話し合った。

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資産バブルが止まらない

 河野 日経平均株価が久々に3万円台になったのは、昨年の5月19日でした。それが今年3月4日には4万円台へと突入しました。

 木下 上昇機運があるのは株だけじゃないですよ。不動産価格も、戸建て、マンションともに都市部を中心に、値上がりが続いています。

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日経平均は最高値を更新 ©時事通信社

  日本は30年に亘るデフレで、物価がほとんど上がらなかった。そこに昨年来の急激な円安が加わり、日本の商品や資産は、海外の投資家からはものすごく格安に見えています。株や不動産、為替、暗号資産など、一攫千金を狙ったマネーが、国内外から流れ込んでいる。リーマンショック以来、ほぼ一貫して上昇し続けてきたアメリカからずいぶん遅れて、資産バブルが到来しています。

〈資産バブルが止まらない。日経平均株価は、80年代バブル期を超えて史上最高値を更新。不動産価格も高騰し、昨年1年間に全国で発売された新築マンションの平均価格は、7年連続で過去最高を更新した(「不動産経済研究所」調べ)。金や暗号資産などの価格も軒並み上昇。一体、この上り調子はいつまで続くのか。市場を知り尽くした3人の専門家たちが、資産バブルの行方を分析する。〉

 木下 この7月、日経平均株価だけでなく、全銘柄を対象としたTOPIXも、1989年12月に付けた史上最高値(2884.80)を一時、上回りましたね。

木下泰氏 ©文藝春秋

 河野 証券会社で金融経済を専門にしてきたエコノミストとして言わせてもらえば、ここ30年ほどの間、アメリカを中心にグローバル市場で何度かユーフォリア(好景気で相場が上昇するなかで、市場が高揚感から熱に浮かされているような状態)が起こるのを見てきました。これまで日本の株式市場はそれに乗り切れなかったのですが、今回はアメリカ発のユーフォリアに、日本も組み込まれたのだと見ています。

 今後もしばらくはこのユーフォリアが続くと私は見ています。その理由は何か。第一に、インフレが落ち着いてきて、FRB(連邦準備制度理事会)が現在の5%超の高い金利から、いよいよ利下げをしそうであること。利下げが行われると銀行預金は高いリターンを求めて、株などへの投資に向かいます。そのため今後も、株高が続くと期待されているのです。もう一つの理由は、AIの普及によって、生産性が上がると楽観視されていることです。