「外国人の不動産投資は、かつてよりは増えていると思いますが、実は直近の不動産価格高騰の牽引役ではないと私は見ています」

 そう語るのは木下泰氏。外資系ファンドや新生銀行(当時)などを経て、現在は不動産関連投資のアドバイザリー業務を行うEminence Partners代表を務める、“不動産投資のプロ”である。

木下泰氏 ©文藝春秋

 木下氏が冒頭の発言をしたのは、「文藝春秋」9月号掲載のBNPパリバ証券チーフエコノミスト・河野龍太郎氏、東京財団政策研究所主席研究員・柯隆氏との座談会「株・不動産 バブルはいつまで続くのか」でのこと。

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外資系ファンドによる不動産投資が減少

 7月末、日銀の追加利上げ決定を契機に、金融市場が急変した。日米の金利差の縮小を意識して円を買い戻す動きが強まり、円高・株安が急激に加速。市場は一時パニック状態となり、8月5日の日経平均株価は、1987年のブラックマンデー翌日の下げ幅を超えて、史上最大の下げ幅を記録した。

 だが近年の日本の資産バブルの勢いは凄まじく、特に不動産価格の上昇が続いてきた。7月公表の路線価の全国平均は前年比で2・3%増。29都道府県で上がり、東京は5・3%増。東京23区の昨年の新築分譲マンションの年間平均価格は、1億円を超えた。巷では、「中国や欧米などの投資家が、超円安で割安になった日本の不動産を購入している」と囁かれているが、木下氏はそれに対して異を唱える。近年の不動産市況への外国人投資家の影響は認めつつも、「2023年度の第4四半期の数字を見ると、外資系ファンドによる不動産投資が減少している」と指摘する。

 その原因は、コロナ禍を契機に欧米でリモートワークが定着したことだ。そのため都市部のオフィスビルの需要が激減した。