欧米の不動産投資ファンドが軒並み火の車に

 木下氏はその実情を明かした。

「サンフランシスコのオフィスビルの空室率は約30%です。日本に置き換えて考えてみると、たとえば六本木ヒルズのような複合商業施設のビルのうち、一棟丸ごと空室になっているような状況です。結果、不動産価格が6~7割も下落、大損害を被っている。マンハッタンでも空室率は25%ほどと非常に高い」

河野龍太郎氏 ©文藝春秋

 そのため欧米の不動産投資ファンドは、軒並み火の車になっている。

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「日本支社に対して本社から『日本のマーケットで早く利益を出して、金を持って帰れ』と、厳命が出ているのです。機関投資家は1回で100億円、200億円単位で購入します。額がデカいので、それが一斉に売りに出されると、市場に与える影響は相当なものになります」(木下氏)

地方の優良企業が不動産を買い始めた

 では、誰がその穴を埋めているのか?

「地方の優良な企業です。デフレ下で借り入れを極力減らし、従業員をリストラして積み上げた潤沢なキャッシュフローを持っている。日銀がマイナス金利政策を解除したことで、今後は金利がある世界に突入します。現金は寝かしていたら、目減りしてしまう。その恐怖感から、不動産を買い始めたのです」(木下氏)

柯隆氏 ©文藝春秋

 座談会では、日本の不動産価格の今後についてだけでなく、日本の株価を押し上げている“米中新冷戦”、1970年代初頭レベルより低い超円安の行方、インフレを招く政策を掲げるトランプ氏が大統領になった場合の懸念点などについて、白熱した議論が交わされた。

 市場を知り尽くした3人のプロが、16ページにわたり語り合った「株・不動産 バブルはいつまで続くのか」は、「文藝春秋 電子版」(公開中)と「文藝春秋」9月号(8月10日発売)に掲載されている。