社説が浮かび上がらせる「唐突」「ちぐはぐ」な岸田政権
読売新聞の社説は、
・23年度からの5年間の防衛費をそれまでの1.5倍超に増やすことを決めた。
・敵基地攻撃能力についても、保有に舵を切り、安保政策を大きく転換した。
・日韓関係を改善させた。
・少子化対策として児童手当や育児休業給付の拡充を柱とする法改正を実現させた。
などを挙げた。ここで注目したい言葉は「道筋をつけた」である。実はそのプロセスについて問われていたからだ。
毎日新聞の「脱デフレ進展も 財政再建半ば」(8月15日)では、
・防衛費大幅増額は必要な追加財源は法人、所得、たばこ3税の増税などで賄うとしたものの、増税時期は未定のままだ。
・看板政策の「次元の異なる少子化対策」は財源となる支援金制度は医療保険料に上乗せして国民、企業から1兆円を徴収するのに、首相は「実質的な追加負担はない」と主張。若い世代を中心に不満と不信感がくすぶる結果になった。
などなど、「国民に負担を求める財源確保は後回しにする傾向が強かった」と指摘。首相を「増税メガネ」と揶揄する言葉も出回り、政権浮揚策として1人当たり4万円の定額減税を始めた例も挙げている。
さらに社説では、
《理念や哲学は見えず、多くの政策が人気取りのバラマキと映った。》(毎日新聞)
ここで書かれていることは先述した岸田政権のキーワード「唐突」「ちぐはぐ」にもリンクしないだろうか。
信濃毎日新聞の社説では、
《首相の「聞く力」は、賛否の割れる問題の片側の意見にしか向いていなかった。閣議決定などで主要政策を決定する政治手法の常態化は国会軽視であり、民主主義をないがしろにしている。》
と政治手法について問われていた。
岸田首相はいつから「聞かなくなった」のか
そういえば「聞く力」を掲げて登場した岸田首相だったが、いつから「聞かなくなった」のか。約1年前の当コラムでは岸田首相の分岐点について考えている。
岸田氏は首相就任後、政策や決定を出して世論に不評だと、あとから“軌道修正”するというスタイルをとっていた。発足から4か月となる岸田政権について『政策の軌道修正繰り返す岸田政権…支える官邸の重厚布陣』と報じられている(読売新聞オンライン2022年1月28日)。
そんな岸田首相が独断で大きな決断をした。
2022年の安倍晋三元首相の「国葬」だ。世論調査では徐々に反対の声が大きくなったが、得意の軌道修正はしなかった。閣議決定もしたので引っ込みがつかなくなったように見えた。ところが、押し切ったら「いけてしまった」のである。
あれが分岐点ではなかったか?
岸田氏と安倍氏でいえば、2022年の読売新聞「新年展望」(1月3日)で安倍氏は次のように語っていた。