雑誌での映画評連載や未公開作配給が楽しくてしかたがない

――俳優として目指していることはありますか。

小川 そうですね……自分にとって目指すって難しくて。でも、俳優としてすごいと思って尊敬している一人は、ミシェル・ウィリアムズです。スピルバーグの『フェイブルマンズ』のような大作のスターとして輝いている一方で、ケリー・ライカート作品ではオーラまで消してしまっているような演技が素晴らしいと思います。スターはどんな作品に出てもその俳優にしか見えない、ということがしばしばありますけど、ミシェル・ウィリアムズは作品に溶け込んで、オーラも自在に変えられる。私もその作品ごとにまったく違う存在として居られる俳優になれればと思います。

撮影 橋本篤/文藝春秋

――雑誌での映画評連載や映画配給など、俳優にとどまらない映画への関わり方をされています。

ADVERTISEMENT

小川 とにかく映画が好きなんです(笑)。好きが高じて、未公開映画の上映会をやられているサム・フリークスの岡俊彦さんやGucchi's Free Schoolの降矢聡さんと知り合ったことから、コメントを書くようになり、映画評を書くようになりました。「DVD&動画配信でーた」の連載はとても難しくて、日本未公開の素晴らしい作品を自分で探してきて紹介しなければいけないので、毎回苦労しています。「キネマ旬報」でもレビューを書かせていただくようになったので、締切地獄なんですけど(笑)、最高の仕事です!

撮影 橋本篤/文藝春秋

 上映会「現代未公開映画特集」では、海外との上映交渉など配給の仕事もしていますが、日本でまだ観られていない素晴らしい作品を紹介するのがほんとうに楽しくてしかたないんです。

――最後に、『石がある』をこれから観る観客にひとことお願いします。

『石がある』©inasato

小川 いろいろな見方のできる作品だと思います。上映時間104分の間だけは、どうぞ肩の力を抜いて、映画に身を委ねてほしいですね。

おがわ・あん 1998年生まれ、東京都出身。2014年に『パズル』(内藤瑛亮監督)で映画初出演。以降、『天国はまだ遠い』(濱口竜介監督)、『あいが、そいで、こい』(柴田啓佑監督)、『スウィートビターキャンディ』(中村祐太郎監督)などに出演。2023年は『PLASTIC』(宮崎大祐監督)、『4つの出鱈目と幽霊について』(山科圭太監督)、『犬』(中川奈月監督)、『彼方のうた』(杉田協士監督)と主演作が立て続けに公開。「DVD&動画配信でーた」「キネマ旬報」にて連載、「週刊文春CINEMA」への寄稿など執筆活動も行なっている。

撮影 橋本篤/文藝春秋

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。