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息をのむ幻想的な光景が
廃車の先には、息をのむ光景が広がっていた。
いびつな形をした山から長方形の石を切り出すため、不思議な地下空間が山に残る。まるでこちらに迫ってくるかのような迫力がある。時間の経過とともに全体が緑に覆われつつあり、それがまた幻想的だ。
近づいてみると、石を切り出した痕跡がはっきりと見て取れる。山の表面は植物に覆われているため見えないが、こうして断面を見ると、山の大部分が大きな岩で構成されていることがよく分かる。
人が山を切り取ってできた地下空間には、さらに奥へ通じる坑道があった。しかし、入口は施錠され、立入禁止の看板も掲げられている。奥も見てみたかったが、この圧倒的な風景を見られただけでヨシとしよう。
そう思い、しばし雰囲気に浸っていると、なんだか騒がしい声が聞こえた気がした。数人ではない、もっと大人数の声だ。
いや、しかしここは道もない山の奥。空耳だろうと思ったが、声は徐々に近づいてくる。
そして、ついに人の姿が見えた。本当に人が来た。しかも20人以上の大所帯だ。
これには驚いたが、たった一人でここまで来ていた私を見て、向こうもさぞビックリしたことだろう。話をお聞きすると、この日“福井歩こう会”によるウォーキングイベントがあり、石切場跡がコースに入っていたのだという。ここを訪れるコースは年に一度しか設定がなく、偶然にもそれにかち合ったというわけだ。