真っ暗な坑内を進んでいく
一歩足を踏み入れると外の蒸し暑い空気とは一変し、ひんやりとした空気が身を包む。内部に照明などはなく真っ暗だ。
こんな時のために常に懐中電灯とビデオライトを持ち歩いていてよかった。誰よりも明るいライトで坑内を照らす。
そこには、想像を超える世界が広がっていた。
天井まで数十メートルはあろうかという地下の大空間。そして、飛び交う大量のコウモリたち。私はこれまで色々な石切場跡や坑道を探索してきたのでコウモリの大群は見慣れているが、これほどまでの大群は見たことがなかった。ざっと1000羽以上は飛び交っているのではないだろうか。キーキーという甲高い鳴き声とバサバサという羽音が、BGMのように常に聞こえている。上から常にパラパラと何かが降ってきているのは、おそらくコウモリの糞尿だろう。ちょっと気になるところだが、私以外に気にしている人はいなかった。
肝心の石切場は、作業の途中で放棄されたようで、切り出されながらも運び出されなかった石や、使われていた道具類までそのまま残されている。こうした生々しい痕跡が、当時の状況をリアルに物語っているようだ。ここは、地域の産業を記録する貴重な産業遺産であると同時に、見る者を魅了する空間でもある。
壁面に残された石切の跡、削られた地面には水が溜まり地底湖が形成されるなど、何時間でも見ていたい光景だが、これはあくまでもウォーキングイベントの一部であり、私は偶然居合わせただけの部外者だ。10分ほどで見学はあっという間に終わり、集団から遅れないように急いで外に出た。
蒸し暑い空気とともに現実に引き戻された私は、集合写真の撮影を買って出た。その後、一行は次のポイントへと歩いて行った。
夢のような時間が忘れられなかった私は、後日、改めて舘さんにお話を聞いた。