切り立った岩肌にポッカリと開いた窪み。そこにスッポリと収まるように、神社のお堂がある。とても自力で建築できるとは思えない場所に建っており、異世界を思わせる絶景だ。

 こう書くと、鳥取県三朝町にある投入堂を連想される方がいるかもしれない。投入堂は三徳山三佛寺の奥院で、開祖が法力で山に投げ入れたとされている。

鳥取県三朝町にある三徳山三佛寺の投入堂

 ただし、私が同じような異様な姿を目にしたのは四国でのことである。

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 高知県越知町にある聖(ひじり)神社は、鳥取の投入堂を彷彿とさせることから“土佐の投入堂”とも呼ばれている。とはいえ、三徳山三佛寺の知名度に反して、地元高知県ですら知名度は低く、実際に訪れる人は極めて少ない。

対岸から眺める聖神社

 どうやってこんな場所にお堂を建てたのか。いつ誰が建てたのかといった来歴さえ分かっていない。とにかく謎の多い神社である。

車を5時間走らせて向かった“異世界を思わせる絶景”

 その風貌と謎の多さに惹かれた私は、早速、現地に向かった。自宅がある岐阜から高速を5時間走って高知市に。そして、高知市から西に進み、聖神社入口まではさらに2時間近くを要した。

聖神社参道入口。私の車以外に車は皆無だった

 道路沿いに駐車場があるが、普通車が5台も入ればいっぱいになってしまう。多くの人が来ることは想定されていないようだ。事実、週末にもかかわらず、駐車場に車の姿は皆無だった。

参道入口にある東屋
東屋は、立ち木を伐ってそのまま柱にするという斬新な手法

 聖神社へ向かう登山ルートは2つ。最短距離で聖神社に向かうルートと、谷を隔てた対岸の山から聖神社を眺められるルートだ。私はあえて遠回りとなる対岸ルートを選んだ。メインディッシュは最後まで残しておくタイプだ。