岐阜一番の繁華街・柳ヶ瀬。明治時代の金津遊郭を起源とし、戦後になると岐阜駅前に発生した繊維問屋街とともに隆盛を極めた。しかし、現在の柳ヶ瀬は、商店街としてそれなりに賑わっているものの、往時とは比較にならない。

スタープレイス柳ヶ瀬商店街。夜の街にも関わらず人影もまばら。スタープレイスは柳ヶ瀬の一部分に過ぎないという事情はあるが、柳ヶ瀬全体を見渡しても、程度の違いはあれど衰退していることに変わりはない

 2023年9月に放送されたTBS「水曜日のダウンタウン」では、日本一シャッター率の高い商店街として、西柳ヶ瀬の“スタープレイス柳ヶ瀬商店街”が、188店舗のうち159店舗がシャッター(閉業)と紹介され、多くの人に衝撃を与えた。

柳ヶ瀬が“歓楽街”であったことを示す貴重な生き証人

 そんなスタープレイス柳ヶ瀬商店街で、ずっと気になっている店舗があった。キャバレー“ムーランルージュ”だ。メインストリートである柳ヶ瀬本通りに面し、赤い風車の羽根をあしらった装飾が目を引く。パリにあるキャバレー・ムーランルージュをイメージしたのだろう(ムーランルージュとはフランス語で赤い風車の意味)。

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ムーランルージュの外観。柳ヶ瀬にあった数々のキャバレーが閉店してゆくなか、最後まで営業している唯一のキャバレーだった

 しかし、いつか入店したいと思っているうちにコロナ禍に見舞われた。そして、2020年2月にひっそりと閉店してしまったのだ。すぐに行かなかったことを後悔しつつ、閉店したとはいえ内部を見られないものか……。周囲に「行きたい、見たい」と言い続けていると、地元に詳しいまちおこし会社の社長である友人が所有者を見つけ、話を繋いでくれた。そして2023年末、ついにムーランルージュの鍵を借りることに成功した。