性別による無意識な思い込みから、若者の未来の可能性が狭められてしまうケースがある。保護者が「娘は結婚して退職・離職する」と考え、「女性が大学に行く必要はない」という結論に達するケースがその一例だ。
そうした考えはなぜ蔓延ってしまうのか。また、そもそもそうした誤った発想はなぜなくらないのか。ここでは、地方女子学生の進学の選択肢を広げることを目指して活動する江森百花氏、川崎莉音氏の共著『なぜ地方女子は東大を目指さないのか』(光文社新書)の一部を抜粋し、ジェンダーステレオタイプの被害にあう学生の声を紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)
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子どもへの教育投資のジェンダーギャップ
ここまでは、保護者から偏差値の高い大学に行くことをどれだけ期待されるかに男女差があり、それが本人の進学意識に影響を与えていることを説明してきました。
この、保護者の期待度のジェンダーギャップが、実際に子どもの教育にどれだけお金をかけるか、いわゆる教育投資の金額という形で如実に表れるケースもあります。学習塾などの学校外教育にかけるお金・大学の学費(私立に行かせるか行かせないか)・大学時代の生活費(一人暮らしをさせるかさせないか)など、大学進学に関してお金の問題は非常に大きく、「親からどれだけお金をかけてもらえるか」で本人の取れる選択肢の幅や志望校に行くために必要な努力量はかなり異なります。
実際、文部科学省が実施した「令和3年度子供の学習費調査」によると、通塾費用や参考書の購入費などを含む「補助学習費」は、小学校・中学校・高校の各段階において、男子の方が金額が高くなっています。例えば、全日制公立高校の男性の補助学習費の平均が19万6900円なのに対して、女性の補助学習費の平均は14万5614円で、およそ5万円程度の違いがあるのです。
「女子に学費はかけられない」
福岡県出身のCさんの家庭には、強いジェンダーステレオタイプがはびこっていて、保護者からの教育投資には男女で大きな違いがあったと言います。
Cさんには2つ上の兄と、2つ下の弟がいます。兄と弟は、中学から進学塾に通っていましたが、Cさんが「塾に通いたい」と訴えても、「自分でなんとかしなさい」と聞き入れられませんでした。Cさんの兄は首都圏の私立大学薬学部に進学しましたが、Cさんは「女子に学費はかけられない」と言われて私立大学および地元外への進学や浪人を一切禁止されていたそうです。この時点で保護者からの教育投資に大きな男女差があることは明らかで、地方女子学生で同じような経験のある人も一定数いることでしょう。しかし、Cさんの話にはさらに続きがあります。