特定非営利活動法人「#YourChoiceProject」は、大学受験時の進路選択において、地方で暮らす女子が大きなジェンダーギャップを抱えていると指摘している。また、同団体の調査によると、女子学生は男子学生に比べ、浪人を忌避する傾向にあることが明らかになっている。いったいなぜなのか。

 ここでは、地方女子学生の進学の選択肢を広げることを目指して活動する江森百花氏、川崎莉音氏の共著『なぜ地方女子は東大を目指さないのか』(光文社新書)の一部を抜粋。浪人を選択しなかった女子学生、あえて浪人を選択した女子学生、それぞれの生の声を紹介する。(全2回の1回目/続きを読む)

写真はイメージ ©AFLO

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「コスト」を気にする女子学生、「リターン」を重要視する男子学生

 さて、ここからはなぜ浪人しようと思う女子学生が少ないのかを考察します。一般的に挙げられる理由が、その「コスト」です。後にまた詳しく触れますが、親世代を中心に「女子が10代の1年を余分に受験勉強に費やすこと」に対して強い抵抗がある方が多く、それを言葉で直接的に伝えていなかったとしても、そのような態度が女子高校生に強い浪人回避傾向を形成している可能性があります。

 一般的に浪人で得られるもの、つまり「リターン」は、上手くいけば志望校に進学できることに尽きます。場合によっては浪人1年分にかかった費用を上回るほどの生涯所得も期待できるでしょう。一方で、浪人することに付随して発生する「コスト」は予備校などに通う費用もさることながら、進学後に多くの同級生の年齢が一つ下になる、就職が1年遅れるなどが挙げられます。また、1年余分に勉強したからといって確実に現役時代より良い結果になるとは限らないという「リスク」を想定する方もいるでしょう。

 以上の客観的に考えられる「リターン」「コスト」そして「リスク」に、男女で量的な大差はないはずです。そうなると、男女でここまで浪人肯定度に差が出るのはむしろ質的な評価、つまり、「コスト」をどの程度気にするか(もしくは「リターン」と比した時にその差に価値を感じるか)、「リスク」をどの程度回避したがる傾向にあるかの二つだと考えられます。

 ここからは、インタビューをもとに、浪人を回避しようとする学生や保護者がどのような考え方でいるのかを見ていきます。