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 1年浪人したからといって、結婚や出産の時期が大きく変わるわけはありません。このような、曖昧なイメージに基づいた保護者の焦りのもとで、女子学生は浪人という選択肢を取ることができず、志望校を下げざるを得ない結果に至っています。

 さて、女子学生とその保護者のインタビューから、合理的とはいえない理由で浪人という選択肢を与えてもらえない女子学生の存在や、いつしかそれ以外の選択をすることに対して恐怖を抱いてしまっている女子学生の様子がわかってきました。次に、男子学生のインタビューからそのマインドセットの違いを明らかにしていきます。

納得がいく努力をしたかった

 現在東京大学文科三類1年生、埼玉県の浦和高校(男子校)出身のTさんは、現役時代に前期日程で東京大学を受験し、不合格だったものの後期日程で北海道大学を受験し見事合格しました。ただ、大学が始まる直前まで北海道大学に進学するつもりだったところを思い直し、浪人を選択したそうです。その理由を「現役時代、納得いくまで勉強できておらず、ベストを尽くしたという感覚がなかった」からだと教えてくれました。父親も浪人経験があったことや、周囲に浪人を選択する同級生がいたことも後押しとなり、浪人という決断に至ったそうです。

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 先ほどのNさんの例と比較すると、浪人を「敷かれたレールからの逸脱」と捉えるか「自分の限界にチャレンジするチャンス」と捉えるか、そのマインドセットの違いは明らかです。しかし、もちろん、性別の違いがその理由である必然性はなく、その理由であって良いわけがありません。女子学生全体が持つ、浪人に対する「コスト」=否定的なイメージを改善し、自分の望む将来を実現する一つの選択肢として男子学生同様前向きに捉えられる風潮に変えていかなければ、浪人する女子学生の人数をはじめ、志望校を高めに設定する女子学生の人数も増えることはありません。

 もちろん、以上は個々の事例であり、女子学生で浪人を積極的に選択した人も、男子学生で周囲に反対され浪人を選択できなかった人もまたいることと思います。重要なのは、事実として浪人を選択する男女比には大きな偏りがあり、これらの事例が、明文化されていない圧力や傾向、ステレオタイプが要因である可能性を示唆している、ということです。