次いで、脱派閥を掲げて頑張ってきたはずのガースー元総理こと菅義偉さん(75)。そもそも派閥解消で頑張ってきた人なので、ようやく我が世の春でも来たと満足しているかと思いきや謎の岸田文雄ヘイトを発症してしまいました。いや、菅さんからしたら岸田さんの派閥全解消の英断は泣いて喜ぶべき立場じゃないの?

 なにぶん人を呼んでおいて15分の持ち時間のうち10分は寝てるとか「往年の、あの菅義偉」を知る面々からすると寂寥感も覚えますので、まわりの人もあんまり菅さんを表に出したり人に会わせたりしないようになってしまいました。すだれの向こうで院政を敷くと、間に立つやつが権力握ったりするのは朝廷や幕府の伝統ですが、大丈夫なのでしょうか。

 さらに東京五輪で派手にやらかしたのにまだ権勢を誇っている森喜朗さん(87)。裏金問題に揺れた旧安倍派(清和政策研究会)復興という謎の使命を抱いて小林鷹之陣営に推薦人を送り込む了承をし、実質的に後ろ盾に近い存在になりつつあるようです。相変わらず身近な人からの人望はかなりあるため、小泉進次郎が登板してきて不思議な人事介入や、謎予算などなど森さんの周辺にいる人たちが全力で入り込んできそうで注目が集まります。

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 ただ、能登半島地震や面白知事・馳浩さんの一件では、周辺への細やかな配慮で立身された長老ならではのムーブも光りました。

 最後に俺たちの二階俊博さん(85)。老害四天王と揶揄される4人の中でもっともボケてない人物として、今回の総裁選でも中核に存在する逸材であります。本人のご勇退は決定的ながらも世耕弘成さん絶対に許さないマンとして屹立し、幹事長を退いてからも謎の存在感で、今回も安定の大ボス感を醸し出しています。

長らく「実質的に次の総理を決める戦い」になっている自民党の総裁選 ©JMPA

 長老の中で一番シャッキリしているの、実は二階さんなんじゃないでしょうか。普段はぼんやりしているくせに、ひとたび政局だ人事だ総裁選だとなると途端に電源が入って稼働し始めるのはさすがです。

なんだかんだ長老中心にかき集められる議員票を無視できない

 このような長老がなぜ隠然たる勢力を保てているのかと言えば、結局は総裁になりたい各候補者が積極的にご挨拶に顔を出したり、ご意向を伺ったりするからで、誰が誰のバックにつくのかで、推薦人20人だけでなく議員票をどのくらい積めるか期待する面があるのでしょう。そして、派閥が無くなってもなんだかんだで長老中心にかき集められる議員票は無視できないというのが実情なのだろうと思います。

 結果的に、自民党の古き良き、一方で弊害も多かった派閥政治はいったん解消するものの、結局は数は力、不透明な政治情勢をせめて数メートル先でも見通したい人たちが集まってきています。小惑星が集まって地球となるかのように、新たな政策集団として再編成されていく途上が今回の総裁選なのでしょう。

 そして、なんだかんだ自民党も当選4回以下が議員の半数以上を占め、中堅より下がギッシリ詰まっているのが特徴です。いまや中堅だ、40代だし若いんだというのはさしたる差別化・売りにはならないのだと理解しておくことが大事とも言えます。