オーナーシェフを務めるスイーツ店「Toshi Yoroizuka」が今年で開業21周年を迎えた、鎧塚俊彦さん(60)。
ヤンチャだったという高校時代、「男がケーキ屋なんて」と笑われながらも洋菓子の世界に飛び込んだ理由、日本で積み上げたキャリアを放り投げて臨んだヨーロッパ修行などについて、話を聞いた。(全3回の1回目/#2、#3を読む)
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仲間がタバコを吹かすなか、黙々とパフェを食べていた
――仲間が喫茶店でタバコを吹かすなか、黙々とチョコレートパフェを食べているような高校生だったそうですね。
鎧塚俊彦さん(以下、鎧塚) 実は、タバコは中学生の頃に少しだけ吸ったことがあって。でも、まったくおいしいと思わなかったんです。だから、吸っている友達に「おまえら、おいしいの? これ」って聞いたんですよ。そうしたら「おいしくない」って答えるんです。お金を払っておいしくないものを吸うっていうのが、なんだか納得できなくて。おいしいと思うものにお金を払って、おいしいと思って食べたほうがいいなって思っていましたね。
――チョコレートパフェは、パティシエとしてのルーツでもあるとか。
鎧塚 小さい頃に、親父に連れていってもらったデパートの食堂で、チョコレートパフェを食べたのが原体験ですね。それまで、お菓子といったら祖母が出してくれた干芋とかゆで卵だったから、感動しましたよ。
パッチに腹巻き、みんなに「かっこ悪い」って言われたけど…
――喫茶店のシチュエーションから察すると、高校時代はヤンチャだったのかなと。年代的にツッパリが流行っていた頃ですが。
鎧塚 1980年くらいかな。完全にそういう時代でしたね。目立っている子、元気のある子といったら、そんな感じだったんでね。だから「昔は悪かった」なんて自慢する気はまったくないですね。
――パンチパーマにつっかけ履いて……みたいなスタイルが流行していましたよね。
鎧塚 そうそう。でも、僕はパッチに腹巻きというスタイルでした。『トラック野郎』シリーズで、菅原文太さんが演じていた星桃次郎に憧れていたっていうこともあったんだけども。
みんなに「カッコ悪い」って言われたけど、「どこがカッコ悪いねん。誰に見せんねん」と。タバコとパフェの話もそうですけど、女の子からどう見られるかを気にして格好つけるよりも、自分がカッコいいと思う格好したほうがいいだろって。そんな考えで生きていましたね。

