オーナーシェフを務めるスイーツ店「Toshi Yoroizuka」が今年で開業21周年を迎えた、鎧塚俊彦さん(60)。
2015年に亡くなった妻・川島なお美さんとの日々、動物愛護活動に尽力する理由、日本の洋菓子業界の未来について、話を聞いた。 (全3回の3回目/#1、#2を読む)
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――2013年に川島さんの肝内胆管癌が判明しました。ご自身の網膜中心静脈閉塞症をプラスに考えるようにしたとのことですが、ご自身とパートナーでは闘病に対する向き合い方は変わるものでしょうか。もしくは、パートナーが病身になったからこそ、「ああしておけば」と考えたりとかは。
鎧塚俊彦さん(以下、鎧塚) 女房の病気がわかったとき、僕は「すぐ手術しよう」と言いましたけど、彼女は手術しないことを選びました。でも、それは女房がすべて独断で決めたわけじゃないんです。いろんな人たちに相談したうえで、抗がん剤治療、延命治療をしないことを選んだので。そして、僕は夫として最後は賛同したわけです。
もし、僕が賛同せずにすぐ手術をしていたら治ったかもしれない。でも、帰ってくるわけじゃないので「ああしておけば」なんて考えていたら、僕は生きていけないですよ。
なにもかも踏まえて生きていくしかない
――後悔していたら生きていけないと。
鎧塚 後悔しながら生きていたら「お前も、はよ逝けよ」と言われているのと一緒だと思うんです。女房の決断も僕の賛同も、なにもかも踏まえて生きていくしかないんですよね。それに、女房が僕に対して「はよ来てくれ」と願っているとも思っていないですし。どちらかといえば、川島なお美という存在を今後も忘れてほしくないと願っているんじゃないかなって。その願いを叶えるためには、いろいろ考えてきましたし、いまも考えています。
だから葬儀は、どうすれば女房を女優として送り出せるのか、どうやったらファンの皆さんの心に残るような形になるのだろうかとか、そんなことを考えていましたね。
「あなた、やるわね」と言ってもらえている気がした
――2015年9月にお亡くなりになりましたが、葬儀で「女優として送り出す」ためになにかされましたか。
鎧塚 最後、シンプルに「女房を拍手で送ってあげてください」とお願いしたんです。青山葬儀所から出ていくときに、みなさんが拍手して送ってくださって。そうしたら、沿道でもワ―ッと拍手してくれるファンの方が大勢いて。「ありがたいな、ありがたいな」って思いましたし、女房から「あなた、やるわね」と言ってもらえている気がしましたね。

