「再婚はしないでね」という言葉を守ることはない
――川島さんの遺書には「一緒のお墓に入りたいからできれば再婚はしないでね」と記されていたそうですが、それを守り続けるつもりは?
鎧塚 あの言葉を守るということはないです。でも、この先もずっと女房は弔っていきます。たとえば、亡くなった親を「忘れたほうがいい」とか「忘れちゃいけない」とかないじゃないですか。やっぱり、一生弔っていくものですよね。それと同じですよ。
でも、いつか「一緒にいたいな」と思える人と出会えたら、お付き合いすることはあるでしょうし、現時点で再婚は考えていないけれど、これから先も絶対にないとは言い切れないですね。それで女房が怒るとも思わないです。
――なんだか、ズケズケと聞いてしまって申し訳ないです。
鎧塚 いえいえ。こういう機会なので話しておきますが、自分や妻の病気を通して考えたこととか、意識の変化って本当に多いんですよ。残された人の立場っていう面でいえば、仕事においても思うところがありますし。
引退を考えたこともあった
――「Toshi Yoroizuka」のスタッフは、みなさん長いのですか。
鎧塚 これは自慢でもあるんですけど、店をはじめて20年以上になりますが17年、18年働いているスタッフが5、6人いるんです。彼らが店を守ってくれているんです。僕が守っているんじゃない。
――独立される方などは。
鎧塚 います、います。それは僕らの業界ではしかたのないことですから。やっぱり、気持ちよく送り出してあげたいですね。独立する弟子の邪魔をしたりしたら、親方としてどうかなって。そんなことしていたら、弟子なんて来てくれないですよ。
――過去のインタビューで、「左目の視力を失ったときは引退も考えた」といったことを話しています。その後、引退を考えたことなどはなかったのですか。
鎧塚 ありましたね。いま、僕は「Toshi Yoroizuka」を100%背負っている状態なんですけど、そこまで背負う必要はないんじゃないかなと考えています。引退というよりも、背負っているものをいくらか降ろしたほうがいいんだろうなって。

