誰も教えてくれない「サードドア」

小西 いま抜け道のお話が出ましたが、ご著書に出てくる「サードドア」という考え方は僕がとくに好きな部分です。ファーストドアは一番最初に誰でも開けるドアで、99%の人がそこに並ぶ。つまり何か課題を解決しようとしたら、まぁそこから行くよねという正攻法です。二つ目のセカンドドアは、VIP専用の入口で、お金持ちやセレブなど特権階級的な立場ならアクセスできるドア。

 で、サードドアというのが、普通は人が並ばないし、誰も教えてくれない「抜け道」のルートです。お金もコネもない人が成功するには、他の人がとらない裏道を探す必要がある、と。

©AFLO

けんすう そうなんですよね。元ネタをご存じない方のために説明すると、ごく普通の大学生が有名になりたくて何をやったかが書いてある『サードドア』という翻訳書があって、著者はクイズ番組に出て賞金をもらって、 ビル・ゲイツ、レディー・ガガといった著名人に次々とインタビューしまくって有名になるんですね。僕はそれを読んだときに、「なるほど、自分がやってきたこともサードドアだな」と感動して、自分の方法論としても発展させました。

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ドバイで王族とのコネをつくる驚きの手

小西 それってすごく汎用性の高い考え方で、僕の友人のある起業家が、次は「ドバイでビジネスを成功させたいって思っています」って言うから「どうやってやるの?」って訊いたら、寿司屋になるという。ドバイでビジネスをやりたかったら王族とのコネクションが鍵になるわけですが、普通に正攻法で知り合うのは絶対に無理。唯一、直接話せる機会があるとすれば寿司屋のカウンターだろうって。

 彼はもうすでに銀座で半年、西麻布で半年寿司を握って修行して、寿司屋のカウンターで王族と話す準備を整えているそうですが、これを聞いたときに「そんなサードドアがあったか!」と驚きました。

けんすう まさにサードドア! しかも寿司職人ってビザが下りやすいらしくて。数ヶ月、日本で修行すればビザがもらえる場合もあったらしいです。今ではみんなやり過ぎて、そこまで容易でもないとも聞きますが……。 

小西 そのハックの仕方はすごいですね。僕はよくチームに、「上から下から横から、全部見て、新しい売り方を考えよう」と伝えています。正攻法だけじゃなく、違うルートから行くクリエイティブで開く扉があるのではないかと。

けんすう 小西さんのお仕事でサードドアが開いたのは、どんなときでしたか?

小西利行氏

小西 たとえば2017年に経産省と組んでプレミアムフライデーというのを作ったとき、本来あれは経済活性化策なので、本当はお金を国民にバラ撒くのが一番早いんです。ストレートに子ども応援券とか地域で使える商品券とか。でも、それだと結局は長続きしないし、予算もあまりなく、働き方改革の推進も求められていました。

 そこで裏ルート的な打ち手として、月末の金曜日に「第3の時間」をつくって、飲みに行ったりショッピングに行ったりして「それぞれのプレミアムな金曜日の過ごし方をしよう」という行動開発を仕掛けました。まあ、いろいろとご批判も頂いたプロジェクトではありましたが…。

けんすう そんなことないですよ、僕のまわりではみんな「プレ金」好きでした! あと、ご著書に書いてあった、ランチビュッフェに1万円つけるアイデアもいいですよね。