プレゼンで大失敗したら“キャラ変”が起きた

小西 自分を俯瞰して、物語の主人公としてキャラを作っていくことが仕事でうまく行く秘訣、というメッセージは本当にその通りだと思うんですね。僕自身、人生で何回か“キャラ変”しましたから。

 最初新人の頃、僕は全く「できない君」で、1日に2回、違う先輩に同じ喫茶店に呼び出されて「コニタン(注:小西さんのこと)は、物凄くクリエイティブ向いてないから、辞めた方がいい」と言われたことがあるんです。一瞬ドッキリかと思ったほど。

けんすう それはショックですね!

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けんすう氏

小西 そんなダメダメなある日、広告業界の中でも花形のクライアントさんとの会合で、俺が一番端っこでぼけっと座っていたら、「あとのプレゼンテーションは小西からやります」って突然先輩に振られて、もうプレゼンはボロボロで大失敗。まわりからも、すごい叱責されて。

 でもそこで、もうこれ以上ないというくらい恥ずかしい思いをしたら、逆に開き直れて“キャラ変”が起きたんですね。「自分をよく見せたい」みたいな殻が全部吹き飛び、「恥ずかしいこと言っていいんですよね?」とズケズケものを言うキャラを目指すようになった。見た目も金髪にして、髭生やして、メガネをかけて(笑)。

 それですごく生きやすくなったんですよ。これまで敬遠していた大物クリエイターや厳しい先輩たちとも、いろいろなことを率直に話せて、普通に仕事ができるようになった。

 もともと僕はクリエイティブ志向でもなんでもなく、キャラの設定や考え方の方法論で道を切り開いていったところがけんすうさんとも共通する気がします。

けんすう 劇的なキャラ変ですね(笑)。僕はもともと在学中に、当時ひろゆきさんが運営していた2chに対抗したライバルサイトを作りたいっていう人がいて、そこに参加していたんです。そしたらある日、ひろゆきさんから冗談半分に電話がかかって来て、そこから仲良くなっていって。

 その頃ひろゆきさんがやっているレンタル掲示板の会社があって、「社長に向いてなさそうな奴」にやらせようというノリで社長にされたところから経営者人生が始まっているので、めちゃくちゃ流され流されで辿り着いた感じですね。

ビジネスで「抜け道はある」という気付き

小西 最初から経営者志望でなかったところが、事業のオリジナリティにもつながっている気がします。

けんすう 当時の気づきで面白かったのが、ビジネスで「抜け道はあるんだな」ということ。インターネット黎明期で、普通の大企業は、誹謗中傷もあるような雑多な掲示板の運営なんてできないし、そこには訴訟リスクもあるけれど、だからこそ普通の大学生が斬り込んでいってもうまくいく可能性がある。

©AFLO

 内容証明が何百通もきたり、警察から捜査協力依頼がきたりもしましたが、テクノロジーが伸張するさいに起きる社会との摩擦を、学生だからこそあまりリスクを背負わずに経験できたのは大きかったですね。