新著『すごい思考ツール』が話題の広告クリエイター・小西利行さんと、『物語思考』がロングセラーとなるけんすう(古川健介)さんとの初対談が実現。正攻法では壁を突破できないときの方策を示す、白熱のスペシャルトーク!

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小西利行氏(左)とけんすう氏(右) 撮影・細田忠(文藝春秋)

「メタ認知」と世阿弥の「離見の見」

小西 今回は新著『すごい思考ツール』に熱い推薦コメントを頂いたうえ、対談イベントにもご登壇いただきありがとうございます!

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けんすう 本書は、「誰でも使えるアイデアの本」として完成度が高くて、非常に面白かったです。僕自身、文字通り100以上の気づきを得られましたし、必ずしも特別な才能やセンスがなくても成功できるノウハウは、ツール化して人に伝えることができるんだと実感した本でもありました。

小西 すごく嬉しい感想です。以前から僕は、けんすうさんを連続起業家として注目していたのですが、インターネットの最前線でAIやNFTを使った事業開発をしてこられて、とにかくアイデアの発想法が面白そうだな、と。ご著書の『物語思考』はもう3回読んでいて付箋だらけですが、人生の物語化のメソッド――「こういう考え方をすればうまくいく」という方法論がすごく面白かったです。

 僕も物語を重視していますが、普段どちらかというと、モノを売ったり、ブランディングするストーリーとして使っているので、「自分のキャラクターを設定」して行動を変えようという視点が新鮮でした。

けんすう ありがとうございます。僕がけっこう重視しているのは「メタ認知」で、外から自分を見た時にどう思うか、相手目線で考えることを大切にしています。自分のことは、ここ恥ずかしいなとか格好悪いかな? とか様々なバイアスがかかりがちですが、他人から見たらスッと本質がわかることも多い。

 だから自分を一冊の小説の主人公だと見立てて、どうやったらいいかと考えると、最適な道が選びやすいんじゃないか、というのが物語思考の核心にあります。

小西 その考え方は、本でも触れましたが、能楽の世阿弥のいう「離見の見」(りけんのけん)に通じる考え方ですね。舞台には「我見」という役者が観客を見る視点と、「離見」という観客が舞台を見る視点がある。「離見の見」とは、役者が観客の立場から自分をみる視点、つまり、相手側にたって俯瞰的に全体を理解する感覚で、これはまさしくメタ認知です。

小西利行氏

 これが体得できると、自分がどう行動したらいいのか、相手の立場に立って物事を考えられるようになるから、仕事がガラリと変わりますよね。

けんすう そうなんです。例えば『ONE PIECE』の1巻で「海出ようかな?」って迷っているのが10話続いたら、読むのをやめるじゃないですか、つまらないから。ところが、自分の人生だと、結構みんなそういうことをやってしまっていて、「いつ会社辞めようかな?」みたいなことで1年とか無駄に過ごしてしまう。

 他人の視点から見たら「すぐ辞めたら?」と簡単にわかることが、人は自分のことだと膠着状態に陥りがちなわけで。