国民的スターの“欽ちゃん”こと萩本欽一さんと妻の澄子さん(スミちゃん)を描いたスペシャルドラマ「欽ちゃんのスミちゃん ~萩本欽一を愛した女性~」が8月31日午後9時過ぎから日本テレビ系「24時間テレビ」内で放送される。
欽ちゃんが妻の死後に最初に明かした秘話を『ありがとうだよ スミちゃん 欽ちゃんの愛妻物語』(文藝春秋刊)から一部抜粋してお届けします。
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スミちゃんが癌だと言われたのは、ぼくが大学に行っていた4年前のことだった。
最初はお医者さんに「もう長くない」と告げられたのだけれど、それを聞いてもスミちゃんはびくともしなかった。「分かりました。頑張って戦います」と言って、抗癌剤や放射線の治療を受け始めた。すると、治療が効いたのか、癌の進行が止まったんだ。
ただ、この4年の間に彼女は何度か転んで、骨折をしてしまってね。今年(2020年)の8月の頭には、4度目の骨折でまた入院することになった。そのうちに、ご飯もあまり食べられなくなって、少しずつ体が弱っていった。
癌の治療で病院のベッドにいたとき、子供たちと一緒に集まって、いろんな話をした。
あるとき、息子が「お父さんのどこが好きだったの?」と聞いたら、
「うーん、『好き』はないわね」
と、スミちゃんは言った。
「じゃあ、なんでお嫁にきたんだよぅ」
ぼくが訊ねると、彼女がチョット考えてから、こう言ってくれたのは嬉しかったなァ。
「ファンだったの。今もずっとファンよ」
スミちゃんにはぼくと同じくらいの弟がいて、若いときに亡くなったそうなんだ。それで下積み時代のぼくを見て、応援したくなったらしい。