「みんな、ヒーローになりたくねえのかな」「チキンなだけ」
7月16日の阪神戦(東京ドーム)は2-1で競り勝ったのだが、阿部監督は打線のふがいなさに怒りが収まらなかった。特に開幕から期待を裏切られてきたプロ2年目の門脇誠は2度の満塁チャンスで凡退したうえ、その後もバントに失敗して結局見逃し三振に。
それを見た阿部監督はこうぶちまけた。
「みんな、ヒーローになりたくねえのかな。チャンスなのに悲壮感しか伝わってこない。よーし、みたいなのがない。打てなかったらどうしよう、みたいな。チキン(臆病者)なだけなんだろうけど、何が何でも、みたいなのは見えない」
門脇はもちろん、チキン呼ばわりされた選手たちはたまらない。
「ただでさえ巨人の選手は、阿部監督に底知れない厳しさを感じています。叱られて反発するような選手はほとんどおらず、顔色をうかがうばかり。そんな状況でああいう言い方をしても、萎縮を招くだけで逆効果でしかありません」(同前)
中日などでコーチを務めた中村武志氏(現韓国プロ野球起亜コーチ)もこう指摘する。
「今は褒められることで伸びる選手ばかりで、頭ごなしの指導はできなくなっています。アマチュア時代からYouTubeなどでの情報収集にたけていて、早くからプロ選手の技術論にも触れています。『こういう練習をしたら、どう?』とか、提案するような言い方をしないといけません」
中村氏は中日での若手時代、星野仙一監督(故人)の厳しい指導を受けてリーグ屈指の捕手に成長を遂げた。しかし今はそんなストーリーはパワハラとしか捉えられない。阿部監督も他の指導者たちと同様に、気風が様変わりした球界で選手の心を操縦する方法に苦心しているようだ。
そんな中で迎えた8月11日の中日戦(バンテリンドーム)で“事件”は起きた。