平成17年に発生した大阪姉妹連続殺人事件。その犯行内容は酸鼻を極める残忍なもので、かつ犯行直後の犯人の行動は、第三者から見ればいささか不可解な点が目立ったという。ノンフィクションライター、小野一光氏が事件を振り返る。
◆◆◆
まぶしい新緑の生い茂る丘の中腹に、その霊園はあった。大阪府下の某所。訪ねたのは今年4月6日のことだ。
永代供養墓の一画にある四角い大理石の墓標には、「上原家」の文字と、そこに眠る3人の名前が刻まれたプレートが貼られている。
父の上原和男さん(享年67)と、娘である明日香さん(同27)と千妃路さん(同19)の姉妹だ。最近も誰かがお参りに訪れたのだろう。真新しいカーネーションが添えられている。
各々の生没年月日が記されており、姉妹については没年月日が同じ日付だ。
平成17年(2005年)11月17日。
酸鼻を極める事件
いまから約18年前、大阪市内の自宅マンションで事件に巻き込まれ、ふたりの無辜の命は奪われた。
犯人の名は山地悠紀夫(享年25)。07年5月に控訴取り下げによって死刑が確定し、09年7月に大阪拘置所で死刑が執行されている。
その犯行内容は酸鼻を極めるものだ。
事件当日、大阪市浪速区内のマンション4階に住んでいた明日香さんに狙いをつけた山地は、午後10時頃に忍び込んだマンションの非常階段で、同市内のラウンジで働く彼女の帰宅を待ち伏せた。明日香さんは山地を知らなかったが、彼が一方的に彼女を見初めたことによる、計画的な犯行だった。
待ち伏せて約4時間後の午前2時頃、仕事を終えて帰宅した明日香さんが玄関ドアを開けた瞬間、山地が背後から彼女を室内に突き飛ばすと扉を閉めた。起き上がろうとする明日香さんの左頬を躊躇なくペティナイフで刺し、奥の部屋へと連れていくと、さらに腕などを突き刺す。
抵抗できなくなった明日香さんを強姦した山地は、瀕死の彼女をベッド上に放り投げている。そこで一旦たばこを吸おうと、彼が玄関近くに移動したところで、誰かがドアを開錠する音がした。
それは、姉と別のラウンジで働き始めたばかりの妹、千妃路さんが帰宅する物音だった。
咄嗟に玄関脇に身を隠した山地は、室内に入った千妃路さんの口元を右手でふさぎ、左手に持ったペティナイフを、おもむろに彼女の心臓めがけて突き刺した。
そこで山地は、悶絶して倒れた千妃路さんを奥の部屋に引きずっていくと、姉と同じように強姦したのだった。