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写真提供=NHK NHK解説委員の清永聡さん - 写真提供=NHK

一般市民から見た「司法の歴史」をドラマで展開したかった

このドラマで描きたかったものは、ジェンダーや様々な差別など、吉田さんや演出チームなどそれぞれにあるでしょうけれど、私には「司法の歴史」を朝ドラで伝えたいという思いがありました。それは最高裁のような「権力の攻防」ではなく、女性目線あるいは庶民目線で見た憲法の問題であり、刑事司法の問題であり、民法の問題であり、家庭裁判所の問題であり、少年事件の問題であり、というもので、半年間観終わったら、国民から見た司法の歴史をたどっていけるようにしたい。そうした思いに吉田さんも共感して作ってくださったと思います。吉田さんはご自身やスタッフたちの思いを、半年に及ぶストーリーの中に巧みに盛り込んでくれました。感謝しています。

これまでもリーガルドラマはたくさんありました。でも、戦前の「帝人事件(ドラマでは共亜事件)」を取り上げたドラマがあったでしょうか。離婚した女性が夫に着物を返してもらえないという事件も描きましたが、「権利の濫用」を取り上げた作品なんて、まずないでしょう。昭和6年7月24日の「物品引き渡し請求事件」が基になっていますが、これを取り上げたいということで、戦前の判例なので、法務省の図書館に行き、その判例が掲載されている最高裁判所の前身・大審院の民事判例集と一、二審の記録も探して資料としました。

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つまり、「司法の歴史」というのはこれまで誰も触らなかった、裏返せば誰もやっていないからこそ自由にできるもので、そこの品質管理はこちらがやるから、吉田さんはどんどん自由にやってほしいというのが、私の願いだったんです。

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そうすることで、いろいろな差別の問題や、日本の司法制度の課題などが浮かび上がってくればいいなという思いがありました。加えて、私は社会部で長く憲法取材班も担当していましたので、憲法についても正面から扱ってほしいと願っていました。