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しかし、結果的に東京高裁の部総括(裁判長)にもならず浦和地裁の所長で退官している。なぜ乾太郎さんはそこまでだったのかという疑問があります。

おそらくそれは乾太郎さん自身も比較的リベラルな裁判官であったと言われていて、「司法の冬の時代」と呼ばれた当時、その出世をさまたげるようなことがあったんじゃないか、とも想像もしますが、今となってはわかりません。

ドラマで描かれているように、嘉子さんと乾太郎さんの再婚には、お互い連れ子がいて、家庭内での波乱もありましたが、二人は互いの子どもを育てあげ、社会へと送り出し、その後の人生を共に過ごしています。乾太郎さんが出世を望んでいた裁判官だったとは思えず、幸せな結婚生活だったと言えるのではないでしょうか。

清永 聡(きよなが・さとし)
NHK解説委員
1970年生まれ。NHKで社会部記者として司法クラブで最高裁判所などを担当。司法クラブキャップ。社会部副部長などを経て現職。著書に『気骨の判決――東條英機と闘った裁判官』(新潮社、2008年)、『家庭裁判所物語』(日本評論社、2018年)、『戦犯を救え――BC級「横浜裁判」秘録』(新潮社、2015年)がある。