朝ドラこと連続ドラマ小説「虎に翼」も9月で最終月に突入。新たな人生のパートナーを見つけた裁判官の寅子(伊藤沙莉)はどうなるのか。NHK解説委員の清永聡さんは「ドラマでは事実婚として描かれたが、寅子のモデルになった嘉子さんは、同じ裁判官の三淵乾太郎さんと再婚して三淵嘉子となった。再婚して『気持ちに余裕が出た』という文章も残している」という――。

司法の世界を描く「虎に翼」の企画はどうやって始まったのか

私が「虎に翼」に「取材・清永聡」という役割で関わるようになったきっかけは、2018年に『家庭裁判所物語』(日本評論社)を書いたことでした。その本を読んだ制作統括・尾崎裕和と石澤かおるという「虎に翼」のプロデューサー2人から、「三淵嘉子さんをモデルにした朝ドラってできると思いますか?」と相談され、ドラマの話が動き出しました。2022年秋のことです。

女性初の裁判所長となった三淵さんの評伝自体はいくつかあったんですが、それだと縦軸――つまり、彼女の人生の物語は描けるけど、家庭裁判所の創設や少年法の問題や原爆裁判など、いわゆる横のイベントについてはあまり詳しくない。そこで、一緒に作ってくれないかという相談を受け、本を書いたときからお付き合いが続いていた三淵嘉子さんなどのご遺族に一緒に会いに行きました。

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私はNHK解説委員として司法担当を務めているので、プロデューサーを普段取材している法務省や最高裁にも連れて行きました。法務省では実際にロケをさせてもらったり、最高裁からは資料を提供していただいたりしています。その上で、『家庭裁判所物語』を書いたときの大まかな材料をまとめて脚本家の吉田恵里香さんやドラマ部のスタッフに提供したんです。

そこからストーリーを作っていく中で、吉田さんやスタッフから「こういう裁判を取り上げたいけど、良い判例はないですか」とか「戦前の捜索令状がほしい」などのリクエストがあると、そのつど、資料を探しに行く流れで進めてきました。